偉人・達人が残したもの

キャリア・デザイン、キャリア・カウンセリングという言葉にふれる機会が多くなりました。夢をもてなくなり、将来的な職業観や仕事に対するイメージが描けない子どもたちが増えているからでしょうか。人生の3分の1の時間を費やす仕事に向き合うことで、偉人・達人といわれる人々は、何を学び、どんなことを教訓として得たのか。子どもたちに職業のプロ、人生のプロがつかんだ生きることのすばらしさをメッセージとして贈るときに参考になります。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信・進路通信

生きる喜びとは主役を演じることを意味しない。

福田恒存さん(劇作家)

 三年間、バレーボール部の補欠として過ごした生徒が、色紙に次のように書いて卒業していきました。
「先生、私はバレー部では万年補欠でしたが、人生では決して補欠になりません」
 バレーボール人気の高かった時代で部員も多く、試合での出番が少なかったので、万年補欠という気持ちになったのでしょう。いつも黙々とボールを拾い、コートを整備する姿が思い出されます。それにしても「人生では決して補欠になりません」という言葉は、なんと重い言葉でしょう。(中略)

 限られたポストには限られた人間しか就けません。運動会で勝敗をつけるのはかわいそうだというPTAの主張で手をつないでゴールしたとか、幼稚園で白雪姫を七人にして演じたとか、平等主義が強まるとおかしなことが出てきます。知識や技術、判断力や行動力、そして何よりも豊かな人間性を備えた人が、他者の推挙で限られたポストに就くのです。(中略)

「人間世界はことごとく舞台で、すべての男女は俳優である」(『お気に召すまま』)。シェイクスピアのこの有名な言葉のように、人間は人生でいくつもの役割を演じていかなければなりません。現在のポストに不満を持つ人には「今の役割を徹底して果たしなさい。いずれ主役が回ってきますからしっかり実力をつけなさい」と励ましたいものです。

(『子どもの心を育てる珠玉の言葉』佐藤允彦著/ 学事出版より)


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