偉人・達人が残したもの

キャリア・デザイン、キャリア・カウンセリングという言葉にふれる機会が多くなりました。夢をもてなくなり、将来的な職業観や仕事に対するイメージが描けない子どもたちが増えているからでしょうか。人生の3分の1の時間を費やす仕事に向き合うことで、偉人・達人といわれる人々は、何を学び、どんなことを教訓として得たのか。子どもたちに職業のプロ、人生のプロがつかんだ生きることのすばらしさをメッセージとして贈るときに参考になります。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学年だより・学級通信

子どもが帰ってきて、「お母さん、今日つらかった」と言ったら、
「そう、つらかったの」と聞いてあげる。
「あんたが悪いから」とつい言いそうになるが、
相手の気持ちに沿って、
ゆとりを持つことが大事です(読売新聞・2015.1.4)。

渡辺 和子さん(ノートルダム清心学園理事長)

 この受け答えを、渡辺さんは「〈の〉の字の哲学」と呼んでいる。夫が仕事から帰ってきて、「あ〜疲れた」と言ったら、「疲れたの」、夏に「あ〜暑かった」と言ったら、「暑かったの」と言って、受け止めてあげる。この〈の〉を心がけるだけで全然違ってくるという。

 これは単に〈の〉の字一字だけの問題ではなく、人の気持ちに寄り添う点で、深いものを持っている。疲れたの、暑かったのと言われて、私だって疲れているわよ、暑いわよ、あなただけではないのよと切り返したら、どうだろう。
(中略)

 まずは、相手が切り出した言葉を素直に受け入れること、すべてはそこからはじまる。その入口を閉ざされることは、関係の拒絶であって、情の通じ合いの遮断でもある。
 情の通い合わない日常生活ほどつらく味気ないものはない。時にはいたたまれない状態を作り出し、二人の関係に冷気が流れ込む。

 ましてや、子どもにとって母親の冷気ほど致命的なものはない。母親の一時的な言葉によって生み出された冷気が、子どもの心にも冷気の再生装置を作り出さないともかぎらないからだ。

(『月刊プリンシパル』2015年5月号/ 学事出版より)


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