偉人・達人が残したもの

キャリア・デザイン、キャリア・カウンセリングという言葉にふれる機会が多くなりました。夢をもてなくなり、将来的な職業観や仕事に対するイメージが描けない子どもたちが増えているからでしょうか。人生の3分の1の時間を費やす仕事に向き合うことで、偉人・達人といわれる人々は、何を学び、どんなことを教訓として得たのか。子どもたちに職業のプロ、人生のプロがつかんだ生きることのすばらしさをメッセージとして贈るときに参考になります。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信・進路通信

他人との関係でというより、自分自身が挫折してしまうという場合、
自分がユーモアを持っていれば挫折しないと思う。

羽仁 五郎 さん(歴史学者)

 人間関係でつまずき、自分を見失ってしまうことが少なくない。(中略)そんなときに、人間としてのユーモアを持っていると挫折しないで済ませることができると羽仁さんは言う。

 剣道を習っていていっこうに昇段しない反抗期の小学生が母親に厳しく叱られていたとき、こう言った。
「ボク、お母さんには勝てないよ」「どうして?」「だって、ボクは三級だし、お母さんは五段だもの」「なに言ってんのよ。お母さんは段なんか持っていないわよ」「あるよ! お母さんの顎が二段で、腹が三段だから五段でしょう!」「アハハハ」。
 この小学生は見事に危機を脱して、しかも挫折することもなかった。

「ユーモアというのは、現実にその場で解決できないことがあって、その場では負けていなければならない場合、それでしょげてしまうというのではなくて、この場では負けざるを得ない、しかし自分は結果においては負けるということにはならないのだという、多角的な見方というのがユーモアだと思うのだ」と羽仁さんは言う。

 日本人にはユーモアがないといわれているが、一般にまじめで几帳面な性格の人が多く、そのため一面的な見方・生き方しかできず、挫折することになるのだろう。そうならないために、日頃からユーモアのセンスを磨いていくことが大切だろう。

(『生徒に贈る言葉の花束』佐藤允彦著/ 学事出版より)


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