偉人・達人が残したもの

キャリア・デザイン、キャリア・カウンセリングという言葉にふれる機会が多くなりました。夢をもてなくなり、将来的な職業観や仕事に対するイメージが描けない子どもたちが増えているからでしょうか。人生の3分の1の時間を費やす仕事に向き合うことで、偉人・達人といわれる人々は、何を学び、どんなことを教訓として得たのか。子どもたちに職業のプロ、人生のプロがつかんだ生きることのすばらしさをメッセージとして贈るときに参考になります。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信・学年通信

他人の意見に「いいね!」と言って意見表明したつもりになっている。
これでは言葉を失っているのと同じです。
言葉の、そして「個」の喪失です。
(「毎日新聞」2017.3.31)

なかにし 礼 さん(小説家・作詞家)

「いいね!」。言うまでもなく、人・もの・ことに賛意を表する言葉で、会話の中で使う時は、殊の外いい響きをもっている。しかし、これをインターネットの世界(とくにフェイスブック)においてみると、様相はかなり異なってくる。すでにアイコンが設定されているため、相手の真意を自分の考えや思いで深く点検することもなく、簡単にチェックしてハイ終わり!としている場合が多いのではないか。

 人は、対面している時は、言葉を吟味しながら話すものであるが、ネットを通した場合は無遠慮になる。相手の変化に気をつける必要がないからである。とくに人とのつきあいを苦手とする人には、気を遣わなくて済み、自分の思い通りに言葉がつながるという利点はある。だが、これが思考を単純化させ、どうでもいい人間関係を助長させることにもなるのだ。

 言葉は人・もの・こととの交わりの中から、本当の意味での「自分の言葉」を紡ぎ出すことができる。それらと関わらない言葉ほど、独りよがりで力なく空虚なものはない。  この風潮の蔓延は、国の将来をも危うくするのではないか、なかにし氏の最大の憂慮はそこにある。日本から言葉が失われ、「日本人は自ら〈声なき民〉を選んでいるのではないか」と、氏は痛切な思いで言葉を絞り出している。

(『月刊プリンシパル』2017年6月号、講話に生かせる現代の名言63(五嶋靖弘)/ 学事出版より)


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