偉人・達人が残したもの

キャリア・デザイン、キャリア・カウンセリングという言葉にふれる機会が多くなりました。夢をもてなくなり、将来的な職業観や仕事に対するイメージが描けない子どもたちが増えているからでしょうか。人生の3分の1の時間を費やす仕事に向き合うことで、偉人・達人といわれる人々は、何を学び、どんなことを教訓として得たのか。子どもたちに職業のプロ、人生のプロがつかんだ生きることのすばらしさをメッセージとして贈るときに参考になります。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信・進路通信

実験が予想外の結果に行き着くこともありました。
「失敗」と残念がってもおかしくないことに、私はワクワクしました。
医師の世界で失敗は許されませんが、研究は違う。
新たな発見につながっていきます。

山中 伸弥 さん(京都大学教授)

 失敗にワクワクする。にわかには信じがたい言葉であるが、山中教授の実際はそうで、そこからますます研究の楽しさにのめりこんでいくとのこと。では、教授に失意の時はないのか。失敗からワクワクまでの間に時がはさまっていないことはないはずだ。ただ、それに費やす時間が極端に少ないということだろう。

 標記の言葉は、あの音楽プロデューサーつんく♂氏との往復書簡の中にあるもの。つんく♂氏は、報道されているように喉頭がんを患い、音楽家としての生命でもある声を失った。失意のどん底に突き落とされたといっていいもの。

 二人の心に通底するものは、その失意に沈み込まないという点だろう。実際、つんく♂氏は声を失ってもエンターテインメント界で世界に役立つものはないかとの模索を開始している。教授は常に、アメリカ時代の研究所長からの教え「Vision and Work Hard」に忠実たらんとする。

 日本人は「Work Hard」では世界に負けない勤勉さを誇るが、足りないのは「Vision」である。この「Vision」がはっきりしていれば、失意に沈んでいる暇はない。教授にとっての「Vision」は、「今治せない病気やケガを将来治せるようにする」こと。「Vision」こそ失敗をワクワクに変え、新たな発見へとつなげていく。失敗は「Vision」の前では常に踏み台にすぎぬ。

(『月刊プリンシパル』6月号/ 学事出版より)


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