子どもをやる気にさせる話

子どもがやる気を出すとき、その意欲の源となるのは夢と希望です。「あんなふうになりたい」「こんなことをやってみたい」という夢みる力と、「ボクにもできる」「ワタシだってやれる」という希望を子どもたちにどう与えるか。
そのヒントがギュッとつまった話をご紹介します。

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信・教科通信

小澤征爾が学んだ「基礎・基本」

基礎・基本が大切なことは、誰しも口にするところです。ところが、実際には基礎・基本に力を入れる人は少ないのです。基礎力が必ずしも十分でないのに「もっと難しい問題をやりたい」「もっと先に進みたい」と考える人が多いからです。

桐朋学園で学んでいたころの小澤征爾さんも、難しいことをたくさんやりたがる生徒だったそうです。小澤さんを教え、指導してくれた齋藤秀雄さんは、「基礎・基本は100%完璧でなければならない」という考えの人でした。

ですから、音楽の授業で簡単なところでも大切だと思われるところは、何回も繰り返し教えました。理解の早い小澤さんにとっては、基礎・基本を徹底することは苦痛でした。
「先生の授業は完璧主義で、面白くない。もっとどんどん先に進んでほしい」。そう考えた小澤さんは、齋藤先生にお願いしました。

それを聞いた齋藤さんは、烈火のごとく怒って、怒鳴りながら基礎・基本がいかに大切かを説明したそうです。あまりの勢いに身の危険を感じた小澤さんは、先生のことばがよく理解できないまま、窓から飛び出して逃げたというのです。
教師としての齋藤秀雄さんは、厳しい上に熱心で、基礎・基本を生徒にたたき込みました。「一番できない人がわかる授業」をする、これが齋藤先生のモットーでした。

ところがこうした基礎・基本を徹底する授業が、「ブザンソン国際指揮者コンクール(1959年)」「カラヤン指揮者コンクール(1960年)」など数々の国際コンクールでの小澤さんの一位優勝に生きてくるのです。

これらのコンクールでの評価は減点法で、ミスをすると減点されるというやり方です。だから、基礎力は100%完璧でなければダメだと教えられた小澤さんに、高い評価が与えられたのです。小澤さんは、齋藤先生のすぐれた授業の効果を実感したそうです。

その後の小澤さんの指揮者としての世界的な活躍ぶりは多くの人の知るところです。
小澤征爾さんと親しいフィールズ賞(数学のノーベル賞といわれる)受賞者の広中平祐さんも、小澤さんとの対談集『やわらかな心をもつ』(新潮文庫)の中で、「基礎力を100%身につけてこそ、応用力がつく」と述べ、「基礎を徹底的に学ばないで、数だけ多くやる人は、先にいって伸びなくなる」と警告しています。

(『学ぶ力と意欲を育てる60のいい話』笹田哲夫著/学事出版より)


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