子どもをやる気にさせる話

子どもがやる気を出すとき、その意欲の源となるのは夢と希望です。「あんなふうになりたい」「こんなことをやってみたい」という夢みる力と、「ボクにもできる」「ワタシだってやれる」という希望を子どもたちにどう与えるか。
そのヒントがギュッとつまった話をご紹介します。

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信

トンちゃんの初夢

「一年の計は元旦にあり」といいますが、みなさんは今年の計画を立てましたか。
21世紀は、個性の時代であるといわれています。つまり一人ひとりの違いがとても大事になるのです。人はだれも生まれながらに、他の人にはないよさをもっています。そのよさをそれぞれが生かしてこそ、明るい社会になるのです。

そこで今日は、「トンちゃんの初夢」というお話をします。
こぶたのトンちゃんは、いつも文句ばかり言っています。
「どうしてぼくはこんなにみっともない姿なんだろう。鼻は上を向いているし、耳は小さいし、しっぽなんてこんなに丸まっている」
トンちゃんはゾウを見ると「あんな長い鼻ほしいな」、ウサギを見ると「耳がかっこいいな」、クジャクを見ると「しっぽがあんなふうにきれいに開いたらな」、ライオンを見ると「強そうだなあ、ぼくもあんなたてがみがほしいよ」。
トンちゃんは、うらやましくてしょうがありません。

そこに、なんでも願いをかなえてくれる女神さまが舞い降りてきます。そして「トンちゃんがお望みなら、願いをかなえてあげましょう」とほほえみながらやさしく言いました。
「え、本当ですか」とトンちゃんは大喜びです。女神さまは呪文を唱えました。
するとトンちゃんは理想の動物に姿を変えました。ゾウのような長い鼻、ウサギのような大きな耳、クジャクのようなきれいなしっぽ、そしてライオンのようなたてがみのある動物に、トンちゃんは変身したのです。

トンちゃんはうれしくてうれしくてたまりませんでした。毎日毎日みんなに自慢していました。しかし、みんなはほめてくれるどころか、不思議そうな顔をして行ってしまいます。そこに人間が来て、珍しい動物だとトンちゃんをサーカスに売り飛ばしてしまいました。
サーカスに来たトンちゃんは、いろいろな芸を仕込まれましたが、何一つできません。ムチでたたかれ「痛い、痛い」と叫んでいるとき目が覚めました。

目を覚ましたトンちゃんは、もとのこぶたでいる姿に「ああよかった」と胸をなで下ろしました。そして、自分のよさをもっと大切にしようと思いました。

(『心のとびらを開く月曜講話』青木靖著/学事出版より)


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