子どもをやる気にさせる話

子どもがやる気を出すとき、その意欲の源となるのは夢と希望です。「あんなふうになりたい」「こんなことをやってみたい」という夢みる力と、「ボクにもできる」「ワタシだってやれる」という希望を子どもたちにどう与えるか。
そのヒントがギュッとつまった話をご紹介します。

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学校だより・学級通信・教科通信

自立すれば勉強力は伸びる

ノンフィクション作家で知られる工藤美代子さんの著書に『女が複眼になるとき』(講談社文庫)があります。「自立」の意味など考えたこともない平凡な日本女性が、異文化体験を通じて悩みながら成長していく体験記です。戦後生まれの工藤さんは、結婚を永久就職と考えるような、ごくふつうの女性でした。勉強は大嫌いだし、まして英語は、外国人の姿を見ると回れ右をしてトイレに駆け込みたくなるほど苦手でした。

工藤さんは留学先で、日系カナダ人で年上の大学教授と知り合い、恋に落ちました。そして、結婚するためにカナダに赴き、彼と共同生活を始めます。大学のキャンパスの中に住まいをもつ彼のために3食、食事をつくり台所仕事にいそしみました。こうして一生が過ごせたらどんなに幸せでしょう、と考えました。

いっしょに住むようになって2週間目のある日、「あなたは、いつまでそうしているつもりなのか?」と質問されました。戸惑っている工藤さんに、彼は「夫だからといって、生涯あなたを食べさせなければならない義務があるとは考えない。あなたは自分の人生をカナダで開拓してくれなければ困る」といわれました。

ショックでした。男なら、夫なら、妻を食べさせてくれるのは当たり前ではないでしょうか。まして、知人も友人もいない異国に来たのです。シクシク泣いている工藤さんに、彼は「カナダ社会でどんな職業につくにせよ、英語ができなければ経済的自立は無理である。まず、学校に通って英語をマスターすべきだ。そのための費用は出してあげる」といってくれました。

それまでの工藤さんにとって、学校とは退屈で役に立たない知識を授ける場所でしかありませんでした。しかし、今度は必死でした。ことばを征服しないかぎり、収入の道はないからです。工藤さんは今まで10年以上にわたって、学校や留学先で英語を勉強してきたのに、全然ものになりませんでした。それがたったの3か月で、英語が使えるようになったのです。              
(中略)
工藤さんの事例からもわれわれは、学ぶ本人が自立し必要に迫られなければ、勉強の成果は上がらないことを知ることができます。

          

(『学ぶ力と意欲を育てる60のいい話』笹田哲夫著/学事出版より)


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