担任から子どもたちへのメッセージ

公立中学校教師歴35年、学級担任歴27年の経験をもち、1960年から学級通信を出し続けてきた山田暁生さんによる「通信で伝える希望のメッセージ」。子どもたちが「自分の居場所」を確認でき、「自分への期待感」がわき上がり、「未来への希望」がもてるようなメッセージの数々は、実体験の深みがあり、子どもたちへのプレゼントのような温かみがあります。通信やお知らせの囲み記事、空きスペースを有効活用するために使えます。

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学級通信・学年だより

初心

 みなさんは「能楽」を知っていますか。テレビなどで、お面をつけて静かに舞う人の姿を見たことがありますか。世阿弥(ぜあみ)という名前を習いましたか。能楽を大きく発展させた人です。室町時代に生きた人ですから、七百年以上も昔の人になりますね。

 しかし、こんなに昔の人ですが、世阿弥が使った言葉は、みなさんもよく知っているはずですよ。それは「初心」という言葉です。聞いたことがあるでしょう。「初心を忘れてはいけません」という使い方をすることもあります。

 これは、現在では「最初に立てた目標をやりとげましょう」という意味で使われることが多いようです。しかし、世阿弥の使い方は、そうではありませんでした。「初心」というのは、「未熟な段階」を言っているのです。(中略)

 能楽という芸能を身につけるために書き残した世阿弥の『花伝書(かでんしょ)』の中に出てくる言葉が「初心」なのです。(中略)「初心」、つまり未熟な段階に戻ってしまわないように、毎日、毎日、少しずつでも前進できる生活を送れることを願っています。

(『子どもたちに詩の心を伝える講話』小金澤豊著/学事出版より)


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