はがき新聞の基礎知識

(1) はがき新聞づくりの意義(2015年4月公開)

はがき新聞とは何か

何を持ってはがき新聞と言うのでしょうか。はがき新聞には3つの要素があります。それは①手紙(郵便)である、②はがきである、③新聞であることです。この3つの要素の上にはがき新聞は成り立っています。では、それぞれの要素について簡単に説明しましょう。

  • ① 手紙である

    作文やレポートとは異なり、読んでくれる相手が明確であるという、はがき新聞の機能面を示しています。返事が期待できるため、そのやりとりによって交流が可能であり、切手を貼りさえすれば、どこへでも届きます。たとえ校内の郵便ごっこであっても、手紙を「書き上げた達成感」や「出す楽しさ」、さらに「もらう喜び」「待つときめき」を味わうことができます。メールとは一味違うコミュニケーションツールとしての手応えを感じられるはずです。

  • ② はがきサイズである

    縦14.8㎝×横10㎝のサイズは日本の郵便制度130年に渡って継承されてきた、いわば黄金サイズ。手軽で、使いやすく、美しい。絵や図や写真の使用、文字の大きさ・増減も自由なら、縦にも横にも使うことができます。幼児から大人まで、自分の持っている能力に応じて制作ができるのは大きなメリットです。壁新聞のように並べて展示するなど、掲示方法も多様です。

  • ③ 新聞である

    この点にこそ表現方法としての最大の意義があります。新聞であるための特性は以下の6つです。

    • (1) 新聞記事は二種類に大別できます。一つは新しい情報。もう一つは書き手の感想・意見・主張。はがき新聞も、インターネットや本から得た情報をそのまま載せるのではなく、自分の考えや発見を伝える手段でなければなりません。

    • (2) 新聞としての名前、つまり題字やタイトルがあります。固有の新聞名をつけることは自分が見つけた情報や自分の考えを継続的に発信していくことの表明に他なりません。長期に渡って続けることが望まれます。

    • (3) 紙面は複数の独立した記事で構成されます。仮にテーマを一つに絞っても、中身は二つ以上の記事で構成したほうが新聞らしくなります。

    • (4) 一つの記事は「見出し」と「本文」と「カット」(絵・イラスト・写真)で構成されます。

    • (5) 伝えたいことを簡潔な文章で表現します。

    • (6) 新聞は特定・不特定を問わず複数の読者を対象にしますが、はがき新聞は一人を相手に発信します。しかし、必ず複数枚プリント、またはコピーして保存・掲示すれば、個から個へという手紙としての特質と、複数の人への伝達を目的とする新聞としての特質の折り合いをつけることが可能です。

PISAが提起するもの

OECDのPISA(学力到達度調査)において日本の子どもたちが読解力テスト(とりわけ記述式問題)に弱いことが問題視されるようになりました。

PISAでは読解力について「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考し、これに取り組む能力」と定義しています。

具体的には以下の4つが求められます。

  • ① テキストの中の「情報の取り出し」
  • ② 書かれた情報から推論してテキストの意味を理解する「情報の解釈」
  • ③ 書かれた情報を自らの知識や経験に関連付ける「熟考・評価」
  • ④ これらを通して得られた自分の考えを論拠を持って説得できるように「文章で表現」すること

つまり、理解・解釈・主張は表現されることによって初めて完結すると捉えており、このような能力は旧来の「詰め込み式学習法」だけで養うことはできません。一方、はがき新聞が狙う作文力とは「現実社会の問題について、短時間に、限られた字数で、自分の考えを、根拠を明らかにして、相手にわかるように書く」ことです。PISAが求める読解力や表現力と、はがき新聞に目指す作文力とは明らかに重なります。

短作文のトレーニングに

はがき新聞が表現力のトレーニングになるのは、はがき新聞が新聞的な文章の特徴を生かして書かれるものだからです。新聞の文章には小説・随筆・論文などとは異なる以下のような特徴があります。

PISAでは読解力について「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考し、これに取り組む能力」と定義しています。

  • ① 制約されたスペースの中で書く

    新聞の紙面には限りがあり、「一定の字数の中でいかに内容の濃い情報を伝えるか」が求められます。はがき新聞が想定する字数はその最少基本単位とも言え、はがき新聞の作成を習慣化することで短い作文の力を養うことができます。

  • ② 重要なことから書く

    新聞記事は「起承転結」型ではなく、結論から書く「逆三角形」型が一般的です。これは「読者が全文を読む余裕がなくても冒頭部分を読むだけで記事の全貌がわかるようにしている」などの理由から。はがき新聞においても、常に自分が一番言いたいことは何かを考えることが大切です。

  • ③ 見出しを書く

    見出しは記事の究極の「要約」です。見出しについて考え、推敲することで要約力が高まります。

  • ④ 取材に基づいて書く

    実際に自分の足で現場に出向き、自分の目で見、耳で聞き、当事者に直接インタビューした記事ほど説得力があるのは、通常の新聞もはがき新聞も変わりません。

  • ⑤ 事実と意見を分けて書く

    新聞の文章の基本です。はがき新聞のように短い文章であっても、二つを区別して書く習慣をつければ、意見を伝える文章力は格段に向上します。

  • ⑥ 読者に向けて書く

    新聞の文章は特定・不特定を問わず、常に複数の読者を想定しています。そのため第三者にもわかるように書かれ、隠語や砕けすぎた言い回しはしません。

(2) はがき新聞づくりの指導と教育効果に続く

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