(8) 小学校の実践事例3:教科横断的な指導に生かす(2017年8月公開)
対象:小学校4年生(大阪府豊中市立原田小学校 教頭 蛯谷 みさ さん)
注)報告者の所属学校名は、レポート作成当時のもので、現在と違っている場合があります。
衝突が生じやすい発達段階
新学習指導要領にもとづき、4年生は「新聞の構成やつくり方」を学習するため、これを学級づくりに生かすことにしました。
一般に4年生はギャングエイジ後半にさしかかり、自己主張と表現方法の未熟さのアンバランスから男女を問わず衝突が生じやすい時期です。一方で、次年度からは学校全体を動かす高学年へ向け、その自覚を促していかなければなりません。社会的事象の改善に対する関心も芽生えます。
はがき新聞で自覚を促す
このような発達段階ではがき新聞をつくる利点は少なくありません。自分たちの学級の生活改善に取り組み、その成果についてはがき新聞を通じて報告するわけですから、「伝える価値」を感じさせられます。学級全体とのかかわりや自分と友だちの関係性に目を向け、互いの成長を認識しながら、高学年への自覚を促すことも期待できます。さらに、はがき新聞の継続的作成により、国語科新聞学習の既習事項を活用した大きな壁新聞をつくることも容易になります。
学級力新聞を作成の手順
まず国語科単元で「新聞づくり」の基礎的な技能を習得し、次に「伝えたいことに合わせて資料を選び、文章を書く」という国語科単元で「健康で安全な行内生活」をテーマに、資料やグラフを入れたA4判の手書き新聞を作成します。なお、はがき新聞づくりは特別活動で行いました。
さらに3学期には、総合的な学習の時間で、今まで学習してきたことを活用し、各自が独自アンケートにもとづく調査で得たデータでグラフを作成。コンピュータを使ってA4の学級力新聞を完成させました。
学習進度に応じて指導
最初に「書き方」を学習し、次に「書く」、そして「書き慣れる」というのが基本的な流れですが、学習進度に応じて、以下のような3段階で、少しずつ条件を加えました。
4年生は、算数では「折れ線グラフ」を、国語では「目的に合わせて資料を選んで書く」という内容を学習し、社会でもさまざまなグラフに触れます。はがき新聞も当初は自由に事実や思いを書かせましたが、徐々にグラフを入れ、それにもとづいた意見を書くといった形式も取り入れました。
事実伝達型
資料分析型
意見記述型
事実伝達型
はがき新聞を取り入れた成果
学級力向上の意識を高める方法としてはがき新聞に取り組んだ結果、さまざまな効果が明らかになりました。
今後の課題
一方で、次のような課題もあります。
思考力、創造力、調和力などが育つ
これらの成果や課題を踏まえた上で、はがき新聞の最大の利点といえるのは「知らせることの喜びと責任を学習できる」、「書くことでつながる楽しさを実感できる」の2点です。
はがき新聞は、自分たちの学級生活を知らせるために書きます。そのために自分たちの生活を振り返り、問題点を話し合い、対策を考え、実行します。そこには、知らせる喜びや試行錯誤しながら創造する喜びだけでなく、書くこと、伝えることの責任を感じ、学ぶ場があります。こうした過程で、思考力、判断力、表現力、分析力、創造力、実行力、調和力も育っていくはずです。
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