はがき新聞で始める学級力向上

(13) 中学校の実践事例3:年間計画に基づいた取り組み

(2018年1月公開)

対象:中学校3年生(愛知県尾張旭市立東中学校 教諭 彦田 泰輔 さん)

注)報告者の所属学校名は、レポート作成当時のもので、現在と違っている場合があります。

多様なはがき新聞の実践

4月にはがき新聞の書き方を教えて以来、1年間に渡って多様な取り組みを行いました。ここでは学級力向上に直結するはがき新聞の実践を紹介します。

 指導・実践(   =学級力関連)
4月自己紹介新聞
5月私を変えた人物・出来事新聞
7月修学旅行新聞
9月STOPいじめ新聞
11月自分らしさ新聞
12月人物紹介レポート新聞(英語の授業)
1月We love 東中(壁)新聞
2月学級力新聞

学級力向上におけるはがき新聞の役割

  • はがき新聞の役割
    記事を通してお互いの考えや意見を知ることで、評価したり、認め合う場をクラスにつくることができます。さらに自分のクラスを客観的に見る目が育ち、自ら学級経営に積極的に関わろうという当事者意識も生まれます。
  • 壁新聞の役割
    はがき新聞を発展させたものとして共同で壁新聞を制作しました。このワークショップ学習により、生徒の人間関係力を高め、お互いが支え合う過程で規律ある学級づくりができました。また、生徒の創造性を育み、お互いが対話し、合意を形成する力を養うこともできました。
  • 保護者にとってのはがき新聞
    はがき新聞という情報の発信により、学校に対する理解を高め、子どもに積極的に関わろうという参画意識を啓発しました。
  • 担任にとってのはがき新聞
    はがき新聞づくりの指導を通じて、各生徒の内面を知ることができ、お互いの理解が深まりました。

ケースA 「学級力新聞」

学級力アンケートの結果をもとに、はがき新聞を作成しました。具体的な指導のポイントは以下の通りです。

①データ(数値、グラフ)を入れる。
②数値の分析、学級の現状と課題を入れる。
③具体的な行動につながる内容を入れる。
④学級への感謝の気持ちを持ち、1カ月間頑張る意欲を示す。

5回目のアンケートを経た上で、卒業まで1カ月と迫った時期に、どうすれば学級が良くなるかという視点で書かせました。学級掲示により記事の内容を共有し、最終回のレーダーチャートでは24項目中22項目が前回の数値を超えました。

はがき新聞サンプル

はがき新聞サンプル

ケースB 壁新聞「We love 東中新聞」

新入生説明会で来校する小学生の保護者向けに、自分たちの学校の良さをPRするために作成しました。制作前にはこんな話をしました。
「卒業を控えた今、みんなが東中で学んだこと、成長したこと、あるいは感謝の気持ちを言葉にしてまとめてみよう。伝える相手はこれから東中に入学してくる小学生と地域の人たち。東中にはこんな部活や行事があり、私はそこでこんな経験をしました、こんな人間に成長しました、こんなステキな友人ができました。学校生活はこんな様子です、さらに授業は、勉強は、宿題は、テストは……。読んだ人がポジティブな気持ちになれることを書きましょう。
 具体的な内容は各自に任せます。大きなテーマの下に、一つの内容を掘り下げていくほうが、皆さんらしさが出ると思うからです」

授業後の感想の中にあった「文を書くのが苦手な人も、絵や飾りつけならできる。自分の得意なところで活躍できるのが良かった」という意見は、このワークショップ学習のメリットを言い得ています。成果はレーダーチャートにも現れ、作成の前後で対話力比較において積極性と合意力の数値が上昇しました。

壁新聞サンプル

教室掲示と学級通信による紹介

はがき新聞の紹介方法は教室掲示を基本とし、下書きに時間をとった作品は学級通信に全生徒分を掲載しました。保護者からの感想も手紙やメールで募り、これも掲載。子どもたちの活動を理解してもらうことが、家庭での話題づくりとなり、家庭での教育力向上にもつながったと信じています。

はがき新聞で成長した姿

自分がはがき新聞づくりでどのように成長したか。生徒たちの感想の一部を紹介します。

◎「こんなことをやっていないかな?」、「他人が傷つくようなことをしていないかな?」と、自分の行いを見直し、気をつけようと思った。(「STOPいじめ新聞」)

◎文章の書き方が変わった。英語みたいに、まずドーンと自分が言いたいことを言って、それから深めていく構成(逆三角形型)になったと思う。

◎自分の言いたいことを伝えることが苦手で、以前はいろんな人に勘違いされたけど、はがき新聞のおかげで言いたいことがちゃんと伝わるようになった。

はがき新聞サンプル

(14) いじめを乗り越えた学級力向上プロジェクト Part1に続く

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