文章を書くのは苦手・たいへん
「文を書くのが得意な先生はいいよなあ。学級通信なんかお手のものだよ」というぼやき声が職員室で聞こえます。確かに,誰しも得手不得手はあるわけですから,文章を書くのに時間が掛かる先生もいれば,あっという間に書ける先生もいるでしょう。ぼやき主の気持ちは理解できます。
けれども,通信の文章はすべて先生自身が書いたものでなくてよいのです。著作権への配慮を怠りさえしなければ,むしろそのほうが素敵な通信になる可能性だってあるのです。
先生ご自身でない人の書いた文章(子どもや保護者の作文,著作権フリーで提供されている文章など)を活用して,楽に通信を作る方法を考えてみましょう。
子どもの声を載せてこそ通信
(1)教師の文章ばかりでなくてよい
保護者が最も関心を寄せるのは自分の子どものことです。保護者は学校での子どもの様子をもっと知りたいと思っています。
また,子どもたちは仲間の気持ちや考えを知りたいと思っています。仲間と交流し,磨きあって成長したいと思っています。
ですから,学級通信には子どもたちの声を載せる必要があり,そのねうちは高いのです。
通信は,先生の書いた話ばかりでなくてよいのです。半分は子どもの文を載せればよいのですし,そのほうが通信としてよいものが出来上がることが多いのです。
(2)子どもたちの考えをコーディネート
かといって,子どもたちの日記などから思いつきで適当なものを拾い上げて紙面を埋めるようでは,教師の発行する通信としてはちょっとさみしいですね。やはり,そこには教育的意図が必要なのです。
例えば,ある行事の後にその振り返りの声を載せた通信を作るとします。そのさい,単に上手に書かれた文章を載せるのではなく,その行事で目標としたことを十分意識して書いた子どもの文や,問題を提起している文などを意図的に取り上げて通信を作ったほうが,今後の学級全体の活動意欲の向上につながるでしょう。
もう一歩つっこんで考えましょう。学級担任は,その学級経営において,子どもたちの意識や活動の深化をねらうわけですが,そのさい,一連の指導の中に学級通信を位置づけるという方法はたいへん有効でしょう。
教師の投げかけや仲間からの問いかけがある。→ それについて,子どもたちが文を書く。→ それを通信に掲載して子どもたちに返す。→ その通信を生かして子どもも教師も考えを深めていく。このように通信を位置づけたサイクルを確立すれば,一連の指導はより意図的になり,きっと大きな教育効果をもたらすにちがいないでしょう。
例を挙げましょう。次に示すのは,ある中学校でいたずら事件があったときの学級通信」です。○月9日,生徒昇降口にある下駄箱(当時は屋外に設置されていた)に,悲しむべきいたずらがありました。その日から3日間の学級通信です。(学級通信「わくわく」は,B5判,日刊。一部改編して掲載)
教師の投げかけから,生徒一人一人が考えました。そして,通信によって互いの思いを共有しました。
共有から新たな考え方が生まれてきました。こうして,しだいに学級の文化が高まっていきます。生徒たちが磨き合いながら成長していくのです。
毎号の学級通信を,すべて教師からのメッセージで埋める必要はありません。上の例では,教師の文は全体の半分ほどです。あとは生徒の書いたものです。(生徒はどの子も実によく書くようになってきます。)
学級通信という場を用いて子どもたちの考えをコーディネートすることこそ教師の役割です。教師は子どもと共に考えればよいのです。おおいに子どもの声を活用した通信を作り,子どもたち自身が成長していくように導きましょう。
《著作権を尊重して》
日記のように子どもの書いたものであっても,立派な「著作物」です。したがって,通信などに掲載するにあたっては,著作権者である子どもの許諾を得なくてはなりません。年度の初めにあらかじめ了解をとっておくとよいでしょう。もし子どもが載せないでと言ったときには,絶対に載せてはいけません。もちろん,絵画なども同様ですし,保護者の声を掲載する場合も同様です。
また,著作物を勝手に改編することは禁じられています。といって,誤字や文のねじれなどをそのまま載せることは子どもを傷つけかねません。やはりきちんと直してから掲載するほうが教育的配慮があるのではないでしょうか。この点についても,前項と同様に,本人の了解を得ておく必要があります。
提供されているデータを活用
(1)たった15分でここまで
下に示した学級通信「おおぞら」(左側の図)は作成途中のものです。すでに子どもの写真が入り,記事は2つ出来上がっています。8割がた完成というところでしょう。
では,ここまで作るのにどれぐらいの時間が掛かったでしょうか。
実は,たった15分ほどです。驚くことに,わずか15分でここまで作ることができました。
短時間で作った方法を明かしましょう。
- ①学級通信「おおぞら」のレイアウトは,前回(「ちょっぴり工夫学級通信」第5回)提供したテンプレート(右側の図)をダウンロードして使いました。
- ②写真は,自分が撮ったものと入れ替え,キャプションだけ自分で書きました。
- ③記事は,実は,2つとも当財団のホームページで提供されている話の「コピペ」(コピー&ペースト)です。コピペのあと,難漢字に読み仮名をふりました。
ですから,ここまでわずか15分です。あと15分もあれば完成するでしょう。合計30分です。
(2)財団のホームページから「コピペ」で
当財団のホームページ「通信づくりの知恵袋」には「通信づくりネタ集」として,さまざまな話が著作権フリーで提供されています。データとして提供されているので,コピペで容易に活用することができます。
① 学級通信お役立ちコラム
学級通信にちょっと話題を加えるコラムのが紹介してあります。雑学からちょっといい話まで,子ども向けも保護者向けもあります。少しアレンジして載せるのもよいでしょう。
② 学級通信の書き出し文例
「学校歳時記」に相当する書き出し文例が,月ごとにご紹介されています。これを利用すれば,出だしで迷うことなく,スムーズに通信を作り始められます。状況に応じて文章をアレンジしながら用いるとよいでしょう。例示した「おおぞら」の1つ目の記事は,ここの「5月の文例8」そのままです。
③ 今日は何の日・記念日一覧,④ 今月のこの日にちなんで
学級通信などを作るときのネタになる記念日が月別に紹介されています。
各月の赤色の記念日は,その日について簡単な説明が掲載してある「今月のこの日にちなんで」につながっています。
⑤ エッセンスの引き出し
学級通信にちょっと気の利いたコラムを入れたいときに助けてくれます。「偉人・達人が残したもの」「子どもに届けたい今日のひとこと」「子どもをやる気にさせる話」「担任から子どもたちへのメッセージ」「胸に響く名言集」「感動を伝える講話集」「心の窓からみえる風景」が提供されています。
例示した「おおぞら」の2つ目の記事は,ここの「子どもをやる気にさせる話」から選び,利用する際の但し書きにあるとおり出典を明記しました。
また,「すぐにつかえるアイデア&情報」には,「イラスト・画像」素材リンク集が紹介されています。著作権フリーのイラストや画像です。利用規約を確認のうえご活用ください。
なお,ウエブ上にはさまざまなことが載っていますが,みだりに使うと著作権の侵害になりかねませんから,慎重さが必要です。必ず著作権フリーのものを用いましょう。
引用する場合にも,長すぎないように留意しましょう。また典拠を示すようにしましょう。
《著作権を尊重して》
もしも著作権を無視して,学級通信などに無断で引用をしたらどうでしょう。著作権法に触れて罰せられる可能性があるだけでなく,著作権をないがしろにすることを子どもたちに教えるという極めて反教育的なことを教師がしてしまうことになります。
例えば,無断で,詩や歌詞の全編を学級通信に載せるようなことはありませんか。これは明らかに法に触れる行為です。
学級通信などの通信は,教育活動であっても「授業の過程における使用」ではありませんし,「必要と認められる限度」「著作権者の利益を不当に害しない範囲」を超える可能性がありますから,不適当と言わざるをえません。
著作者の努力を尊重する精神をもち,著作権に十分配慮しましょう。
当財団のホームページには,著作権に関することが載っています。神谷弁護士の教育と法律,神谷弁護士の教育現場の著作権などをご確認ください。
さらに詳しく知るには,社団法人著作権情報センター(CRIC)などをご覧いただくとよいでしょう。
また,新聞記事も自由に載せてよいとは限りません。もちろん出典を明らかにする必要があります。詳しくは,日本新聞協会のホームページで確認されるとよいでしょう。