教師だから伝えたい
明るく生き生きと学ぶ子どもたちの姿,楽しく過ごし大きく育つ学校行事,社会性を身に付けていく児童会や生徒会の活動,元気に遊びながら豊かな創造性を育んでいる日々の生活,仲間とのいさかいに涙したり仲間の温かさに心を熱くしたりして人間関係を深める日々のドラマ。そんな子どもたちと生活の場を共有している教師は,目にした様子,感じた喜び,考えさせられたできごとなどから得た感動を語らずにはいられません。ですから,学級通信の作成に情熱を傾けるのでしょう。
子どもたちやその保護者からの反響はうれしいものです。作成の苦労以上のものを味わえるというのも教師ならではのことです。「先生はぼくたちの活動をこんなふうに価値づけてくれているんだ」「先生はわたしたち一人一人が大好きなんだ」とでも言いたげな表情で通信を見つめる子どもたち。「わが子がこんなに成長しているのか」「この問題はほうっておけない。わが家でも取り組むべきだ」とリビングに広がる会話。反響の一端が届くと,教師はますますこの仕事にやりがいを感じます。
学級通信を継続的に作成するのは,たいへんなエネルギーを必要とすることです。けれども,通信づくりを情熱的に行っている教師は口をそろえて言います,「教師と子どもたちとの心の絆,保護者との信頼感がみるみる高まった」と。
伝えたつもりが…
それでも,通信が空回りしてしまうことがあります。
教師としての情熱を精一杯注いでいるつもりなのに伝わらない。そして,「どうして読んでくれないんだ」というくやしい思いがつのることさえあります。
では,通信で伝えようとしたことはちゃんと伝わっているでしょうか。思いをいっぱい詰めて苦労して作成した通信であっても,それが十分読まれていなかったとしたら,「伝え方はよかったのか」と反省しなくてはなりません。
通信が「読まれてナンボ」の世界のものであることを認識すると,「読まれる通信」「読みたくなる通信」「心待ちにされる通信」とは,どんなものなのかを考え,「伝え方」を十分考慮した実践を積む必要が生まれてくるのです。
比べてみましょう《研修1》
ここに2つの学級通信(AとB)があります。架空の通信です。大中小学校5年3組で,6月初旬のある日に発行されたこの通信は,4月から数えて第10号になります。
AとBは,内容は同じです。作成に掛けている時間もそんなにちがいません。けれども,Bのほうがずっと魅力的な通信です。(今後,Bのほうが良いという立場で論を進めます。)
2つを比較して,「伝え方」がどのようにちがうのかをいくつも見つけてください。
*それぞれの通信画像をクリックすると拡大されます
いくつ見つかりましたか。どんなちがいが見つかりましたか。
*相違点のバナーをクリックすると,相違点の一覧を確かめられます。
では,どちらのほうが「読む気になるか」「読みやすいか」「引きつけられるか」と,読者の気持ちになって評価してみましょう。
やはり,どの点においても,AよりBのほうが良いですね。
連載の第2~4回では,AよりもBのほうがなぜ優れているのか,どんなことに気を付けたらBのような通信を作れるのかということについて,具体的に考えていきましょう。また,第5~6回では,時間をかけないで良いもの作るのはどうすればよいのかということについて考えましょう。