複製はどんな場合に認められるか。

通信や教材をつくるとき、著作権や個人情報の保護などで、意識せずに法律に抵触していることがあります。
知らなかった、ではすまないのが法律。
問題を未然に防ぐために、また社会秩序を教える教育現場という意味からも、学校における法律を、特に通信や教材など紙媒体に焦点を絞って、神谷先生に解説していただきます。

■学校は「著作物の宝庫」

学校は著作物の宝庫です。授業に使う素材(教科書、楽譜、写真、CD等)のほか、児童・生徒の創作物(作文、絵、習字、工作の作品など)も著作物です。インターネットを利用して行われる「調べ学習」では、サイトから著作物をコピーして発表に使うこともあります。その他、新聞、運動会や文化祭のちらし、プログラム、学級通信など、紙媒体は枚挙にいとまがありません。日々著作物に接する学校で、紙媒体にかかわる著作権の基礎知識をお伝えしたいと思います。

■「複製」と「複製」によらない使用方法の区別

著作権法は「複製」の許諾を基本としています。複製とは、コピー機を使って著作物を複写するのが典型的なケースですが、文芸作品については手書きで書き写すことも「複製」に該当します。かつてコピー機がない時代、図書館で文献を筆写することがありましたが、これは著作権法30 条の「家庭内における複製」として許諾なしに行えるものでした。
しかし、その後、コピー機やスキャナーが普及したことで、高精度の複製物を大量に作ることができるようになり、著作権者と利用者の間の利益を調整することが必要になっています。市販のテスト問題をコピーし授業で利用することについて、出版社の許諾を要するかという問題がその代表例です。
この「複製」による使用方法とは異なり、楽曲を演奏したり、戯曲を上演したり、映画を上映したり、また詩を朗読したりする使用の場合には、複製物は生じません。これは「紙媒体」による使用、つまり「複製」とはちがう使用方法で、著作権法38 条は、非営利・入場無料・演奏者等へのギャラなしの場合、著作権者の許諾をえずに、利用することができることを定めています。学内の文化祭や音楽祭での使用がこれにあたります。

■複製について「許諾不要」とされるための要件

紙媒体に他人の著作物を載せて校内で利用する時、「引用」と「授業の過程における複製」については著作権者の許諾は不要です。「引用」については次回以降にご説明することにし、以下に、「授業の過程における複製」について解説します。
許諾なく授業内で著作物の複製をするためには、次の6 要件が必要です(著作権法35 条)。①複製を行うのは「非営利の教育機関」においてであること、②「授業をする者」または「授業を受ける者」が行う複製であること、③「授業の過程」においてなされる複製であること、④複製の対象は「公表された著作物」であること、⑤複製は「必要と認められる限度」に限られること、⑥複製は「著作権者の利益を不当に害しない範囲」にとどめられること。
市販のテスト問題を生徒に配布して複製利用することは、この⑥の要件を満たさず、出版社の許諾が必要となります。
これら6要件に該当する場合としない場合について、次回以降具体的にみていくことにしましょう。

*著作権等を詳しく知るための参考ホームページ・公益社団法人著作権情報センター http://www.cric.or.jp


理想教育財団では、「季刊理想」に連載の「教室と法律」を1冊にまとめた冊子「学校と法律」を発行しています。ご希望の方はこちらの「助成物品のご案内」ページをご覧ください。

「助成物品のご案内」ページはこちらからご覧いただけます。

※助成品の複写・複製および、教育用途以外でのご使用は固くお断りいたします。