運動会や文化祭で撮影した子どもの顔写真。
通信などに掲載する際は、校外でも見られるかどうか、検討が必要です。
■著作権と肖像権
最近、学校でホームページをつくり、公開しているところが増えています。この関係で、著作権と肖像権についての質問をよく受けるようになりました。新聞や通信など印刷物とも関係が深いので、今回はこれを採り上げましょう。
この二つの権利は、人格権と財産権の両面を有している点、似た一面があります。著作権には、人格権としての公表権・氏名表示権・同一性保持権があり、財産権としての「許諾権」があります。
肖像権は、「みだりに自分の容貌の撮影をされたり、その撮影された画像を公表されない権利」のことですが、これは人格権としての性質をもっています。これに対して、自分の肖像の商品的価値を保護する権利で「パブリシティ権」と呼ばれる財産権があります。これは肖像権の財産権的側面ということができます。
■学校と肖像権
一般の小・中・高等学校で問題となるのは、パブリシティ権ではなく、人格権としての肖像権です。肖像権は、著作権のように法律に定めのある権利ではなく、判例が認めた権利ですので、これまで出された判例を参照しなくてはなりません。しかし小・中・高等学校における肖像権の判例はないため、「人格権」の基礎にあるプライバシー保護の観点から、目的と手段の相当性について個別的に検討することが必要になります。
まず、学校の入学、進級の際に撮影するクラス写真や卒業写真は、クラスの構成員を特定するとともに、在校したことの記録を残す意味があり目的は正当です。そして、クラスの希望者への頒布、卒業アルバムとしての配布がなされる時、その範囲は、クラスと学校の範囲を超えていないため、手段の点でも正当であるといえます。
次に、運動会、文化祭などの場面を写真撮影する場合、前提の「風景」の一部として人物が写り込み、その個人の容貌を撮影することが目的ではない場合、「肖像権」は働かないと考えることができます。しかし、個人の容貌が写真の主を占めている場合、「広報」目的で撮影・掲載することが許されるかを検討することが必要になります。
これについて、「広報」の範囲が児童・生徒の家庭に限定されている場合、撮影の許諾はいらないと考えられます。国会審議中の総理大臣や公開されている競技の選手を撮影するケースなど、公正な報道という「公共目的」が認められる場合、許諾不要とされますが、学校内でもこれに準じた解釈をすることができるでしょう。
■学校外に公表する場合
これに対し、ホームページ上に掲載する写真については、「学校内の広報」の範囲を超えており、被写体となった児童・生徒の保護者から許諾をえることが必要になります。広く地域に配布される学校だよりなど通信の類いも同様です。
さらに、学校案内や要覧、児童・生徒の募集のための配布物に児童・生徒の写真を掲載する場合は、「学校外」に公表することになりますから、ホームページの場合と同様、保護者の許諾が必要と言えるでしょう。
*著作権等を詳しく知るための参考ホームページ・公益社団法人著作権情報センター http://www.cric.or.jp
|