▼第6回
「いじめ」問題をどう取り上げるか?
「今、いじめ問題が大きな話題になっています。私の学級でも、いつ起きるか分かりません。学級通信では、いじめ問題をどう扱ったらよいでしょうか?事実をあからさまに伝えることはできないと思いますが」というお便りをいただきました。今回はこの問題を考えてみたいと思います。
●いじめ問題をどう捉えるか・・・「いじめ」はどの学校どの学級でも起こりえることです。担任の仕事は「いじめが起きにくい学級づくりをする」ことと「いじめを早期に発見し適切に対応する」ことでしょう。子どもたちの日常生活をきめ細かく見る観察眼、その変化を鋭く察知する感性(アンテナ)が必要なのは、通信活動への心構えと全く同じです。
●個別の問題と全体の問題を分けて考える・・・いじめは、「誰が、誰に、どんなことを」したか、しているかという極めて個別の問題であり、同時に学級の成員全体一人ひとりの問題でもあります。「いじめられる子」-「いじめる子」-「おもしろがり荷担する子」-「傍観している子、見て見ぬふりをしている子」-「何とかしなくっちゃと心を痛めながら何もできないでいる子」の存在という重層構造が、そこにあるからです。学級通信は、主として、全体に働きかける役割を果たします。
●書くことと書かないこと・・・お手紙にもあるように、「誰が誰に何を」という個別の事実を、学級通信にあからさまに書くことはできません。書いてはいけません。しかし、「きれいごと」だけを伝える通信では、信頼を得ることも問題を解決することもできないでしょう。「今、学級でこういう問題が起きている」ということは、全体への問題提起として伝え、同時に、私(担任)はこの問題をどういう方向で解決させていきたいと考えているかを明確に示していくことが大切です。通信が契機となって、各家庭の親子の間で前向きな話し合いが持てるように促したいものです。その点で、新聞や雑誌などの記事で有益なものを見つけ参考資料として紙面で紹介することも、考える視点や素材を提供するために有効でしょう。
●安心して相談できるというメッセージを送り続ける・・・しかし、いじめ問題で学級通信の果たすべき機能として、私が最も重視したいのは、「子ども・保護者との関係づくり」ということです。「この先生は、子どもたちのことをよく見てくれている」「この先生なら、悩みや心配事を相談しても大丈夫」「きっと力になってくれるだろう」という信頼感を醸成していくことです。それは、いじめられている、いじめている、傍観している、何とかしなければと心を痛めている-それぞれの立場の子と親いずれにとってもです。そういう安心感・信頼感は、事が起こってからではなく、日々の担任の言動と通信活動、その具体的内容からこそ自然に醸し出されるものです。その意味で、優れた通信活動は、「いざ」という時の緊急対応機能をも創り出していくと言えるでしょう。