学級通信なんでも相談室

第15
調査やアンケートの取り方、まとめ方は?

「読まれる通信」にするためにも、親や子どもたちからアンケートを取って記事にするとよいと思うのですが、その取り方・まとめ方・注意する点など教えてほしいという声が寄せられましたので、お答えしたいと思います。

『実事求是(じつじきゅうぜ)』という言葉があります。「事実に基づいて、物事の真理・真相を探求する」ことです。また、先入観を持たず、風説にも惑わされることなく、真実を求めようとする姿勢のことでもあります。これは通信に限らず、およそ私たちが物事を考える上での基本的な姿勢・態度であると言えるでしょう。アンケートなど「調査」を基にした報道や論説が説得力を持ち、読者に信頼され良く読まれるのは、それが「事実」「実態」に裏打ちされたものであるからです。『調査なくして発言権なし』という言葉もあります。
しかし、事実・実態だから、全て価値があるわけではありません。何より大切なのは、問題意識です。何のためにその「調査」をするのか、何のためにその「アンケート」を取るのかということをなおざりにすると、「数字のための調査」「アンケートのためのアンケート」になりかねません。
例えば、「子どものお小遣い」調査というものを考えてみましょう。ねらいは、「子どもに自分の自由になるお金をもたせることをどう考えるか、どう与えどう使わせるのが望ましいか」共に考えましょうということだと思います。それを、「あなたの家ではいくらあげていますか?」とか「お年玉はいくらだった?」などという調査をして、その数値を発表したとしたら、本末転倒、「お小遣い値上げ交渉」を助長したり、子どもの劣等感や優越感を無意味に刺激する結果を招くだけでしょう。調査すべき「実態」は、お小遣いの額ではなくて(それはそれぞれの家庭の事情によって違って当然ですから)、その与え方・使い方です。
次に大切なのは、調査した結果の表し方です。数字=実態ではありません。数字を示したから実態をよく伝えられたという訳でもありません。アンケート調査の結果を、細かい数字でたくさん表にしたりグラフにしたりしてあるのをよく見かけますが、あまり読者に読まれているとも訴える力があるとも思えません。せっかくのアンケートが活かされず、もったいないなと思います。アンケートは、取る前の準備と同じくらい、時にはそれ以上に、取った後の分析と処理が大切なのです。
心掛けるべきは、「捨てる勇気」と「表現する工夫」だと私は思います。とかく、せっかく聞いたのだから調べたのだから、その結果は全て知らせたい、知らせるのが責任であり誠実さの証だと考えがちですが、そうではありません。本当に大切なこと、重要なこと、知らせたい考えあいたいことに的を絞り、重点化することが必要です。また、結果はなるべく生の「数値」でなく、短い「言葉」で表現する方が有効だと思います。第12回で述べた「見出し」や「リード文(最初の数行)」の重視・工夫です。図や表や絵を使って視覚的に表現するのも有効です。

例えば、「命の大切さ」の授業とか「いじめ」問題への取り組みの中で、「私も死んでしまいたいと思ったことがあるんだ」というつぶやきを、いつもは元気いっぱいに見える子から聞き、驚いた担任が「あなたは今までに自殺したいと思ったことがありますか?」というアンケートを取ったとしましょう。通信の見出しは、「自殺願望アンケート結果から」がいいでしょうか、「“自殺を考えた子”54パーセント」がいいでしょうか、それとも「えっ、“自殺を考えた”半数以上の子が?!」がふさわしいでしょうか?また、記事の中身も、「よく考える○%、時々考える○%、ほとんど考えない○%、全然考えない○%」という数字を挙げるよりも、「どういうときに死にたいと思ったか?」「そういう思いから抜け出られたのはどういう言葉、きっかけだったか?」など、子どもたちの生の声を載せる方が、親子でこの問題を考える上で良い材料になると思います。

時には、同じ問題、同じような設問で、親と子と同時にアンケートをとってみるのも興味深いです。また、日々報道される子どもと教育を巡る事件・話題と連動したアンケートも「教師も親も同じ地平に立って共に考える」題材として有効でしょう。

最後に通信の題材ともなるアンケートの例の一端を挙げてみましょう。

◇保護者へのアンケートの例
・忘れ物ゼロへ 我が家の工夫
・これが、我が家の「家訓」だ
・お小遣い問題、私はこう思う 
・こんなお手伝い、させてます
・上手なほめ方・叱り方
・ゲームとの付き合い方 我が家の場合
・私の子ども時代 一番好きだった遊びは? など     

◇子どもたちへのアンケートの例
・先生から(親から)言われてうれしい言葉、いやな言葉
・この教科、何で好きなの?嫌いなの?
・忘れ物なくし、私の工夫ボクの工夫
・こういうクラスにしたい
・お小遣いの使い道 ベストテン 
・こんな大人になりたい