学級通信なんでも相談室

第11回
保護者の理解や協力を得る方法は?

学級・学年は、学校教育の基礎単位です。そして、より良い学級・学年生活を創りだし形成してくのは、教師と保護者と子どもとの共同の仕事です。特に保護者とは、上下関係や馴れ合いでない、本音の付き合いをしていきたいものです。保護者と教師、保護者同士が、互いに学び合い高めあう、そんな関係を築き上げるのに役立つ通信活動を目指したいと思います。今回は、そのような通信になるよう、保護者の理解や協力を得る方法を考えてみましょう。

まず、その通信が何のために、どんなことを目的にして、どういう内容で発行していこうとしているか、発行の意図と編集の方針をていねいに説明し、理解していただくことが不可欠です。創刊に際して説明するだけでなく、折に触れて確認するのは、保護者に対してだけでなく、続けていくうちに「初心」から離れていきがちな自分自身への軌道修正・復元のためにも有効です。

学習面と生活面において、通信活動が現実の一人ひとりの子ども(我が子!)の理解と健やかな成長に「役立っている」ことを実感してもらうことが一番です。活きて働く通信、つまり「読まれる通信」「待たれる通信」「学べる通信」「新しい情報が得られる通信」ならば、保護者の支持を得られること請け合いです。「定期発行を心がける」ことも不可欠です。

記述・表現の面から言えば、「子どもたちの学校での様子を生き生きと描き出す」「学年・学級での問題点や課題は、保護者にも分かり、その解決に保護者の立場からサポート出来る形で表現する」「教師の側の一方的な要請や押しつけにならないようにする」「恩着せがましい文章や愚痴と取られかねない文章は書かない」「子どもの人権に気を配る」「登場する子どもを偏らせない」「保護者に反応を求めすぎない」「読みやすさと特色づくりを目指す」ことなどが大切です。

双方向性のある通信活動を
今まで、学校から発信される情報は、とかく一方的でした。情報化と言われる現在でも、学校から保護者への「お知らせ」や「お願い」の類が多いという状況はあまり変わっていないようです。それは仕方がない面もありますが、せめて学級・学年通信の場では、「ワンウェイ」(一方通行)でなく「ツーウェイ」、つまり双方向性のあるコミュニケーションを図っていきたいものです。双方向性ということには、次のような内容が含まれています。

①情報源を保護者にも求めることです。保護者から、ちょっと気になる子どもたちの様子、それぞれの立場から得た教育問題に関わる新しい情報などを自主的に提供していただく。また、教師が保護者に取材する(直接聞く、質問して書いていただく、アンケートを取る)場合もあります。

 

②紙上に保護者も登場していただくことです。これも二つの場合が考えられます。一つは、保護者の声を通信の紙面に載せること。教師の側が取捨選択し、編集・再構成して記述します。もう一つは、保護者の文章をそのまま掲載する場合です。テーマとしては、行事や授業の感想、教育問題への意見・情報提供、自由なエッセイなどが考えられるでしょう。私は、「うちの子ってこんな子です」とか「我が子自慢」とか「私の子ども時代」とか「我が母を語る」などのテーマで保護者に書いていただき連載したことがあります。また、順番にノートを回して自由に書いていただいた文章を、ご本人の了解を得た上で掲載したこともあります。

 

③紙上を教師と保護者、保護者同士の交流の場にすることです。日々の授業についてでも、みんなが関心を持っている様々な問題についてでも構いません、共通の話題を一つのテーマとして設定し、何号かに渡っていろいろな見方や意見を自由に出しあう、いわば「フォーラム」としての機能を通信に持たせます。


以上、いずれの場合も、充分注意すべき留意点があります。まず第一に、無理をしないこと。保護者にも「ちょっと頑張っていただく」ことは時に必要ですが、大きな負担を感じさせては逆効果です。保護者は参加へのモチベーションに大きな温度差があります。また、関心があっても「喋ること」「書くこと」に大きな苦手意識を持っている方も当然いらっしゃいます。そういう方々に苦痛や引け目を感じさせないよう、十分な配慮と個別の対応が絶対に必要です。
第二に、教師の考えや立場を押しつけないことです。独りよがりにならないことです。常に、通信の発行者・編集者は、公正・中立・穏健の立場に立って、「子どもたちの健やかな成長」という共通の目的に向かって違いは違いとして認め合い尊重し合うという雰囲気を、学級・学年の中に醸し出したいものです。
第三に、機会均等の原則です。保護者の声を載せていくと、積極的な人、書くのが好きな人、上手な人、ある考えを広めたいと思っている人などが登場する回数がどうしても多くなりがちです。こんな状況が続くと、通信は大多数の人から支持されなくなります。歯止めをかけ、軌道修正し、紙面に登場する回数を出来るだけ平均化するのも、発行者・編集者の重要な役割です。
通信活動は、学校教育に対する保護者の「理解と協力」を得るために発行するものですが、逆に保護者の「理解と協力」が得られない通信活動は、かえって学校教育への阻害要因にすらないかねないことを自覚したいと思います。