はがき新聞活用レポート(19)
はがき新聞を活用して生徒の文章力と思考力が向上(記事作成:2016年冬)
東京都町田市立鶴川中学校 山田 慎一 先生
注)報告者の所属学校名は、レポート作成当時のもので、現在と違っている場合があります
今年度に創立70周年を迎える町田市立鶴川中学校。2002年に教科ごとに専用教室を設ける「教科教室型」をはじめ、特色ある教育システムを採用しています。従来から新聞教育を推進してきた同校は、2016年9月から国語科の授業に「はがき新聞」を取り入れ、生徒の書く力の育成と思考力の向上を図っています。
はがき新聞は短時間で実践できるのが魅力
書く力の育成など、さまざまな教育的効果が期待できる学習法の1つとして、同校が積極的に活用しているのが新聞教育です。しかし、「ある程度の時間を要する新聞制作を頻繁に行うことは困難で、特に受験を控えた3年生は授業時数の確保が厳しい面もありました」と、はがき新聞の指導にあたった山田慎一先生は指摘します。
転機は2015年に校内で行われた「はがき新聞研修会」への参加でした。「通常の新聞制作と比較して圧倒的に短い時間で実践できるのが、はがき新聞の魅力と実感。3年生でも指導計画に沿った授業を無理なく進められると考えました」
初めて実践したはがき新聞は、国語科の和歌の学習(全5時間)。「和歌に込められた心情や情景を捉え、自分の感じ方や考え方を筋道を立てて書くこと」を課題に新聞作成にチャレンジしました。
はがき新聞の作成段階から生徒同士の交流を図る
全5時間の構成は、1、2時間目で三大和歌集の理解を深める授業を実践。3時間目に三大和歌集の特徴を復習しながら、気に入った和歌を選び、印象に残る表現を踏まえて意訳。4時間目からはがき新聞の作成を開始しました。まず山田先生の作品を参考モデルとして掲示し、「選択した和歌の意味と、自分が感じたことをまとめる」(トップ記事)、「自分の興味に沿って、作者や表現、情景などをまとめる」(セカンド記事)など、新聞に盛り込む要素を確認。参考資料として和歌に関する図書50冊を市立図書館から借り受け、授業中に自由に資料を調べられる環境を整えました。
「事前に書く要素を伝えてあるので、はがき新聞に『何をどう書くか』、生徒たちは目的意識を十分に持って資料調べを行ったと思います。調べた内容を自分なりに整理し、記事の優先順位を明確にしてコンパクトに書くことを重視。作成段階で生徒同士が交流できるように4人班編成で作業を行い、物事の見方や考え方を深める工夫も試みました。5時間目には完成した作品を3項目で相互評価し、ワークシートに記入して作品のレベルアップを図りました」
同校では書く力を効果的に高める教育ツールとして、和歌や俳句に限らず、さまざまな授業ではがき新聞を活用していく予定です。
●今回のポイント
このレポートの詳細は季刊理想でご覧いただけます。→季刊理想2016冬号はこちら