第7回理想教育財団教育フォーラム
2017年8月20日(日):大阪 コングレコンベンションセンター
開催プログラム
開催テーマ | |
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学びが変わる、子どもが高める学級力! | |
基調講演 | |
アクティブ・ラーニングとしての特別活動と学級づくり | |
講師 | 國學院大學人間開発学部 教授 杉田 洋 氏 |
実践提案 | |
学級力向上プロジェクトとはがき新聞の活用 | |
発表者 |
プール学院大学 准教授 今宮 信吾 氏 尾張旭市立旭中学校 教諭 彦田 泰輔 氏 |
シンポジウム | |
はがき新聞で高める学級力 | |
シンポジスト |
琉球大学教育学部附属小学校 教諭 新垣 寿志 氏 知立市立八ツ田小学校 校長 原田 悦子 氏 鳥取市立千代南中学校 教諭 鈴木洋一郎 氏 広島市立矢野中学校 主幹 神垣 幸一 氏 |
コーディネーター |
早稲田大学教職大学院 教授 田中 博之 氏 |
特別講演 | |
学習指導要領改訂の要点 ― 特別活動への期待 ― | |
講師 | 文部科学省初等中等教育局 教科調査官(特別活動) 安部 恭子 氏 |
アクティブ・ラーニングを創る「はがき新聞」の活用について知っていただきたい
当財団は、学習課程における「言語活動の充実」のために、子どもたちの「思考力・判断力・表現力」を育み「考える力」「書く力」を高める方法として「はがき新聞づくり」を推奨してまいりました。2017年7月末現在、「はがき新聞」の実践校数は約1,700校にのぼり、財団から教材支援を継続しています。また、「はがき新聞づくり」は新聞教育(NIE活動)としての取組みをはじめ、国語・社会・総合等多くの教科での実践が報告されています。このような背景のもと、当財団はより多くの教育関係者の方々に「アクティブ・ラーニングを創るはがき新聞の活用」について知っていただければと、教育界で活躍されている先生、授業で「はがき新聞づくり」を実践している先生を講師に招いた「教育フォーラム」を年に2回開催しています。今回、その第7回目となるフォーラムを、会場内に小中学生が作成した「はがき新聞」の実例を多数展示するなか、「学びが変わる、子どもが高める学級力! ―アクティブ・ラーニングを創るはがき新聞の活用―」をテーマに、基調講演、実践提案、シンポジウム、特別講演の4部構成で開催しました。 開会に先立ち、当財団の羽山明理事長が「少しでも皆さまのお役に立てればと考えて構成したプログラムとなります。長時間となりますが最後までお聞きいただければありがたく思います」とあいさつを述べた後、林芳正文部科学大臣のメッセージを披露。その後、フォーラムがスタートしました。
基調講演「アクティブ・ラーニングとしての特別活動と学級づくり」
まず杉田洋先生は「学級力=子どもが支持的な学級風土をつくっていこうとする力」と定義したうえで、アクティブ・ラーニングの場として特別活動に期待されていることについて解説しました。さらに、エジプトでの“TOKKATSU”の導入を紹介した杉田先生は、“個”を大切にするエジプトの子どもたちが“TOKKATSU”の活動によって変化した姿から見える、日本における学級集団の強みと弱みを示唆。また、「学級目標は『その目標に対して自分は何ができたか』が重要ではなく、『なりたい自分にどれだけ近づけたか、その結果としてクラスはどうなったか』が問えるようなものにすべき」と説明し、そのためには、子どもと子ども間は“認め合い”と“高め合い”の横糸をつなぎ、教師と一人一人の子どもとの間には“受容”と“要求”の縦糸をつなぐことが重要と解説しました。続いて、子どもを信じて健全な自尊感情や自己効力感を育てる重要性を説き、最後に「どこか行きたい場所は?と聞かれたとき、子どもたちが『学校』と言ってくれるような学校づくり、学級づくりを行いましょう!」と話をまとめました。
実践提案「学級力向上プロジェクトとはがき新聞の活用」
今宮信吾先生は、まず、「同じ方向を向いていること」「信頼できる先輩を見つけて育っていくこと」「仲間を見つけること」「ピンチをチャンスととらえる」「他と比べない強みを生かす」など、教員が学級力を向上させるために取り組むべきことを紹介しました。そして、「学級力とは、子どもたちが自ら、学級づくりに参画し、自分の学級の良さを語り、より良い学級にしていこうというポジティブな営みである。ただし、その責任と方向づけ、運営上のマネージメントは教師にある」と説明。その実現のためには、RPDCAサイクルに基づいた「アンケートと結果としてのレーダーチャート」「スマイル・タイム(話し合い)」「スマイル・アクション(行動実践)」「リフレクション(実践評価)」「リアクション(実践改善)」が重要であると述べ、具体例として学級力向上研究会(関西部会)での取組みを紹介しました。
続いて彦田泰輔先生は、「学級力とは21世紀に必要な『資質・能力』であり、コミュニケーション能力、自ら課題を発見し、解決を図る力といったものが学級力向上プロジェクトを通して子どもが身に付けていくべき力」と説明。そして、「学級担任には、そのための機会や時間、場を提供すること、そして、子どもたちの主体的・能動的な取組みを支え励ますことが求められている」と述べました。その後、学級力向上プロジェクトの実践例として、1時間で完了する「学級力アンケート」の導入方法を紹介。さらに、“子どもの成長を実感しながら本音を引き出し、教師・生徒間、生徒・生徒間の親和関係を構築、さらには授業を通して一人一人の居場所をつくることができるツール”として「はがき新聞」の活用例を報告しました。
シンポジウム「はがき新聞で高める学級力」
田中博之先生をコーディネーターとしたシンポジウム『はがき新聞で高める学級力』では、「はがき新聞」を実践している4名の先生が学級力向上プロジェクトや「はがき新聞」との出会いについて各々が語った後、自校が取り組む「はがき新聞」と学級力向上の関係などについて報告しました。
まず新垣寿志先生が自校における「質の高い集団づくり」の取組みを紹介。学級力向上プロジェクトのRPDCAサイクルの活用方法と「Research」「Check」で導入した「はがき新聞」について解説しました。
原田悦子先生は「先行的に平成28年度にひとクラスだけで行った学級力向上プロジェクトの実践に基づき、今年度4月から全校的に取組みはじめた」と前置きしたうえで、この9月から本格的に取り組む予定の学級力向上プロジェクトについて、レーダーチャートを使った話し合いの進め方、「はがき新聞」の取り入れ方などについて説明しました。
鈴木洋一郎先生は、自校で取り組んでいる生徒会執行部が主導となって活動している「“各クラスの共通の課題を学校全体の課題として取り組む”=学校力向上プロジェクト」について報告。さらに、スマイル・アクションとして学習委員会が全校生徒を対象に取り組んだ「学習クイズ大会」や学級で実施した「夏祭り」などを紹介しました。
神垣幸一先生は、「『なぜ、学級力を向上しなければならないのか』を教員間で共通認識することから始めた」と述べてから、実際に行っている1年間のRPDCAサイクルに則った「学級力アンケート」「スマイル・タイム」「スマイル・アクション」、そして「はがき新聞づくり」について解説。さらに、学級力レーダーチャートと「はがき新聞」を用いた可視化について説明しました。
その後、4名の先生が自校の「はがき新聞」の紹介や「はがき新聞づくり」を通じて子どもたちがどのように成長したか、さらには今後の課題や取組みについて報告しました。
最後に田中先生は、レーダーチャートの重要性を確認したうえで、「はがき新聞」は子どもたちの本音が語り合え、互いに認め合える“真心ツール”であると断言。そして、「デジタル的なレーダーチャートとアナログ的な『はがき新聞』が一緒になることで子ども主体のクラスになる」と述べ、シンポジウムを総括しました。
特別講演「学習指導要領改訂の要点 ―特別活動への期待―」
安部恭子先生は、まず、平成29年3月に公示された新学習指導要領が育成を目指す資質・能力の三つの柱【①何を理解しているか、何ができるか(知識・技能) ②理解していること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等) ③どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)】を紹介。そのうえで、特別活動における主体的・対話的な深い学びの実現の重要性を述べ、続いて、特別活動の目標、学級活動や児童会活動などの各活動・学校行事の目標、内容構成について詳しく説明しました。そして、学習活動や学校生活の基盤となる学級経営について解説した後、学級活動の指導を充実させるための方法を提示。さらには「話し合うことの適切な設定」「板書の工夫」など、すぐにでも取り入れられる具体的な例を挙げました。
質疑応答の後、閉会の挨拶に立った当財団の斎藤靖美専務理事は「子どもたち同士が支え合い、目標に向かって共同して取り組む主体的な学級―。ご参加いただきました皆さま方にそんな学級をイメージしていただければ、本日のフォーラムは成功だったかと思います。本日は長時間ありがとうございました」と挨拶を述べました。
約5時間の長丁場となりましたが、いずれの参加者も熱心にメモを取りつつ、真剣な面持ちで講演の内容に耳を傾けられ、講師の方々の言葉をメモされるなど、有意義なフォーラムとなりました。
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