第6回理想教育財団教育フォーラム
2017年1月22日(日):時事通信ホール(東京都中央区)
開催プログラム
基調講演 | |
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アクティブ・ラーニングとしての特別活動と学級づくり | |
講師 | 國學院大學人間開発学部 教授 杉田 洋 氏 |
実践提案 | |
学級力向上プロジェクトとはがき新聞の活用 | |
発表者 |
愛知教育大学技術教育講座 准教授 磯部 征尊 氏 新宿区立早稲田小学校 主任教諭 藤原 寿幸 氏 |
シンポジウム | |
はがき新聞で高める学級力 | |
シンポジスト |
新宿区立落合第二小学校 教諭 梅澤 泉 氏 広島市立己斐小学校 校長 竹川 智子 氏 大口町立大口中学校 教諭 兼松 健太郎 氏 郡山市立小原田中学校 校長 荻野 由則 氏 |
コーディネーター | 早稲田大学教職大学院 教授 田中 博之 氏 |
特別講演 | |
学習指導要領改訂の方向性 ― 特別活動の新動向 ― | |
講師 |
文部科学省初等中等教育局 教科調査官(特別活動) 安部 恭子 氏 |
学級力の向上に有効な「はがき新聞づくり」
当財団は、学習課程における「言語活動の充実」を目的に、子どもたちの「思考力・判断力・表現力」を育成し、また「考える力」「書く力」「創造力」を向上させる教育ツールとして「はがき新聞づくり」を推奨しています。2016年12月末現在、「はがき新聞」を授業に取り入れている小中学校は約1,500校にのぼり、国語・社会・総合をはじめ、多くの教科での活用が報告されています。財団の研究組織「はがき新聞研究会」では、「はがき新聞づくり」と教育効果に関する調査研究を進め、その結果、子どもたちの言語活動に有意義であることが判明いたしました。
このような「はがき新聞の教育効果」を多くの教育関係者の方々に広く知っていただきたいと、当財団では教育界で活躍されている先生方、授業で「はがき新聞づくり」を実践されている先生方を講師に招き、年2回の「教育フォーラム」を開催しています。
6回目となる当フォーラムでは、「特別活動と学級づくり」「学級力とはがき新聞づくり」をテーマに、特別活動の授業などを通した新しい学級づくりの手法を、さまざまな角度から先生方に検証していただきました。学級力とは、教師だけの学級経営ではなく、教師と生徒、生徒同士、教師同士が協働して取り組み、一致団結して学級を創造する力とされています。その学級力を高めるツールとして注目されているのが「はがき新聞」です。会場ロビーには、小中学生が作成した「はがき新聞」の実例を多数展示。参加者が開演前や休憩時間に熱心に見入っていました。
開会にあたり当財団の斎藤靖美専務理事が「今回の基調講演、実践提案、シンポジウム、特別講演は、先生方の明日からの授業に役立つ、内容の濃い学級力向上プログラムです。長時間の勉強会になりますが、今後の学級づくりのご参考にしてください」とあいさつ。
続いて、松野博一文部科学大臣のメッセージが披露され、フォーラムがスタートしました。
基調講演「アクティブ・ラーニングとしての特別活動と学級づくり」
杉田洋先生が「学級力は子ども力」と解説。話し合い十か条、5つの心得などを通して、生徒たちが主体的・協働的に学ぶことの大切さ、子どもたちが何ができるようになったかという達成感の重要性を論じました。また、子どもたちが自分と違う考え方や少数意見を尊重する意識づくり、教師も生徒も失敗を失敗として捉えず、「失敗から学ぶ」姿勢が学級づくりには必要と説明。学級づくりにおいて、「教師は子どもたちを信用すること、そして教育は調教であってはならない」と力説されました。
実践提案「学級力向上プロジェクトとはがき新聞の活用」
磯部征尊先生が「学級力は子どもたちが持つべき仲間づくりに必要な力」と定義。学級力アンケートを一例にして、学級差の現状や学級力を利用した学級づくりに言及しました。続いて、藤原寿幸先生が生徒たちが作成したアクションカードを活用した「はがき新聞づくり」を提示。アクションカードは、さまざまな効果が期待される活動を文字とイラストによってカード化したもので、生徒の主体性を重んじた「はがき新聞」の実例などが紹介されました。
シンポジウム「はがき新聞で高める学級力」
田中博之先生が座長を務められた「はがき新聞で高める学級力」は、はがき新聞を実践されている4名の先生を迎えたシンポジウム。学級力を高める効果的な取り組み、はがき新聞と学級力向上の関係などについて活発な議論が展開されました。
初めに、梅澤泉先生が小学校道徳科授業のワークショップの実践例を紹介。「真心カード」の活用や「道徳週間」の設定など道徳的価値の視覚化について解説しました。兼松健太郎先生は「合唱コンクール」をテーマにしたはがき新聞の活用実例を提示。生徒の安心力とチーム力が大幅にアップし、「学級づくりに関わる喜びを感じた生徒が多くなった」状況を報告しました。竹川智子校長は全校一斉に同一テーマで書く「はがき新聞と学級力の向上」の関係性について解説。書くことで自分の考えを整理し深めることができると論じました。荻野由則校長は「学級力向上から学力向上の取り組み」を提起。はがき新聞の活用で子どもたちの対話力と協調力が育成されたと述べました。
最後に、田中先生が「子どもたちと教師が協力して学級づくり」「子どもたちが主役の学級づくりとアクティブ・ラーニング」「はがき新聞で心を綴ると学級が成長」など、学級力向上プロジェクトのポイントを解説し、シンポジウムを総括しました。
特別講演「学習指導要領改訂の方向性―特別活動の新動向―」
最終プログラムは特別講演「学習指導要領改訂の方向性―特別活動の新動向―」。安部恭子先生は、学級差や学校差、地域差が大きい特別活動の現状や問題点を提起。特別活動改訂の方向性や論点に関して詳しい説明が行われました。学級活動の内容や学級づくりと学力向上の関連性、学級活動を通じた学級経営の充実など、新しい特別活動の方向性を示唆する有意義な講演でした。
約5時間と長時間でしたが、参加者は熱心にメモを取り、質疑応答では活発な意見交換が見られるなど充実したフォーラムとなりました。
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