第12回理想教育財団 教育フォーラム
2020年2月9日(日):時事通信ホール
開催プログラム
開催テーマ | |
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未来を生き抜く子どもたちの資質・能力を高めるには | |
特別講演 | |
AI時代の教育のありかた | |
講師 | 東京工業大学 名誉教授 (一般社団法人日本教育情報化振興会 会長・一般社団法人ICT CONNECT 21 会長) 赤堀 侃司 氏 |
実践報告&フリートーク | |
新学習指導要領全面実施に向けて | |
進行 | 早稲田大学教職大学院 教授 田中 博之 氏 |
報告者 |
江戸川区立南篠崎小学校 主幹教諭 堀口 友紀 氏 |
南アルプス市立小中一貫校八田小中学校八田小学校 研究主任
前橋 麻里子 氏 |
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函館市立亀田中学校 教諭 川端 裕介 氏 |
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品川女子学院中等部 教諭 植草 穂乃花 氏 |
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アドバイザー |
東京工業大学 名誉教授 赤堀 侃司 氏 |
「未来を生き抜く子どもたちの資質・能力を高めるには」をテーマに
第12回理想教育財団 教育フォーラム開催
第12回目の開催となる教育フォーラムは「未来を生き抜く子どもたちの資質・能力を高めるには」をテーマに、新時代を生きる子どもたちに期待される資質・能力の育成について、さまざまな教育的視点からご登壇の先生方に考察していただきました。学校におけるICT環境の整備や情報通信技術を活用したデジタル教材の導入などを見据え、子どもたちの学習の基盤となる資質・能力と情報活用能力の関連を多方面から検証。また、新学習指導要領の全面実施に対応した効果的な授業づくり、学級づくりに取り組む創意工夫など、はがき新聞や学級力アンケートなどを活用した実践例などが発表されました。
フォーラムの開会にあたり、当財団の羽山明理事長は、財団の沿革やプログラムの内容などを述べ、「約4時間の長丁場になりますが、充実したフォーラムになることを願っております」とあいさつ。続いて、萩生田光一文部科学大臣からの「AI時代の教育のあり方は大変重要なテーマと認識しており、本フォーラムの成功をお祈りします」というお祝いメッセージが披露され、フォーラムが開会されました。
「深い学び」につながる知識の関連付けが重要
特別講演『AI時代の教育のありかた―学びに向かう力を身につけるには―』では、赤堀侃司先生が「社会と学校のつながり」、「ICT環境の導入」、「AI時代の学習」などについて考察。学校で学んだ知識が社会とつながらない現状を指摘し、社会をモデルにした協働学習の必要性を論じました。さらに「教育現場にICTを導入することは、社会の仕組みを学校の中に取り入れること」と強調。それがグループ活動から協働することへ、そしてアイディアが生まれ、道具を使うことにつながると述べました。AI時代の学習では、イギリスの数学者であるアラン・チューリングのエピソードを交えながら、知識の探求、疑問を持つことの大切さ、深い学びへ向かう読解力について論証。「知識の関連付けが深い学びにつながる」と結びました。
「はがき新聞」や「学級力アンケート」を活用した授業・学級づくり
『新学習指導要領全面実施に向けて―未来を生き抜く子どもたちの資質・能力を高める授業づくり・学級づくり―』は、田中博之先生の司会進行によりご登壇の先生方の実践報告とフリートークという形式ですすめられ、赤堀先生にアドバイザーとしてご参加をいただきました。
「深い学びを支える教科横断的な授業づくり」を提唱する堀口友紀先生は、単元配列表を横断的に見て立案する実例を提示。また、「AI時代だから書くことが重要」と日常から取り組んでいる短作文の指導と工夫した点などを紹介しました。「八田小学習スタンダードを生かした主体的・対話的で深い学びのあり方」として、授業改善に注力している前橋麻里子先生は「学習プロセス」、「学習スキル」、「学習モデル」、「学習ルール」など、きめ細かい指導と研究授業の積み重ねを報告。「AI時代だからこそ、人と学びのつながりを高めたい」と述べました。
川端裕介先生は「単元を貫く学習課題の解決を図る探究的な学習」の実践例として、はがき新聞の作成と具体的な活用方法を提示。教科書、資料集、パソコンなどで得る情報収集の指導と課題設定の重要性を検証しました。学校で生徒1人1台のタブレットを持つ私学教諭の植草穂乃花先生は、インターネットの情報に頼るのではなく、自分なりに考えて解答を導くことが大切と報告。翻訳できない世界の言葉を生徒が調べ、自分の言葉やイラストで表現する実践例などを紹介し、手書きとデジタル表現の併用を力説しました。
後半のフリートーク
田中先生から「学級力アンケート」や「レーダーチャート」、「はがき新聞の活用」などに関する説明があり、続いて学級づくりについてのディスカッションに入りました。学級力向上について、「子どもたちと話し合うスマイルタイムの実施」(前橋先生)、「学級力をグループで分析して学級会で議論」(川端先生)など活発な討論が行われました。「はがき新聞の取り組み」について、「短作文~はがき新聞~壁新聞と継続的に実施することが大切」(堀口先生)、「全体の構成を見て、書けるのがはがき新聞のいい面」(植草先生)と、はがき新聞の作成が深い学びにつながると論じました。
赤堀先生は「深い学びの探究は子どもの自主性が重要ですが、情報通信機器が生徒の遊び道具にならないように注意する必要があります。その上で子どもたち1人1人が自由に表現する能力を伸ばしてほしいと思います」と締め括り、フォーラムの終了となりました。
閉会にあたり、当財団の斎藤靖美専務理事が「今回で12回目のフォーラムは、赤堀先生の特別講演、田中先生進行のフリートークと素晴らしい内容で、先生方大変お疲れ様でした。これからも現場の先生方、教育関係のみなさまのご希望に沿う企画を行って参りますので、よろしくお願い申し上げます」と述べました。
フォーラム会場ロビーには、「はがき新聞」などの実践例や資料集が多数掲示され、参加者の関心を集めていました。新時代を生きる子どもたちの資質・能力を高めるための分析・検証ができた有意義なフォーラムでした。
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