第10回理想教育財団教育フォーラム
2019年2月10日(日):時事通信ホール
開催プログラム
開催テーマ | |
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主体的・対話的で深い学びと「言葉」 | |
特別講演 | |
新学習指導要領の方向性 | |
講師 | 國學院大學人間開発学部初等教育学科 教授(文部科学省視学委員) 田村 学 氏 |
基調提案 | |
言葉から具体的に考える「楽しくて深い学び」 | |
講師 | 早稲田大学文学学術院 教授 森山 卓郎 氏 |
シンポジウム | |
楽しく思考力・判断力・表現力を高めるために | |
シンポジスト |
佐賀大学教育学部 教授 達富 洋二 氏 岩手県岩泉町立岩泉小学校 校長 髙橋 和江 氏 熊本大学教育学部附属小学校 教諭 中尾 聡志 氏 京都教育大学附属桃山中学校 教諭 神﨑 友子 氏 世田谷区立八幡中学校 主任教諭 笠井 淳子 氏 |
コーディネーター |
早稲田大学文学学術院 教授 森山 卓郎 氏 |
主体的・対話的で深い学びと「言葉」をテーマに
第10回理想教育財団教育フォーラムを開催
第10回目の開催となる今回の教育フォーラムでは、新学習指導要領の重要な課題である「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」について、知識の構造化、語彙学習の指導、言葉を通して育む思考力・判断力・表現力など、さまざまな教育的視点からご登壇した先生方に論証していただきました。また、「はがき新聞」や「言葉のポケット」を活用した小・中学校の実践例も発表されました。
当財団の羽山明理事長はフォーラム開会にあたり、財団の沿革について述べたあと、「教育現場の先生方のお力になるのが当財団の役割。財団への要望をたくさん寄せていただきたいと思います。フォーラムでは活発な質疑応答を期待いたします。」とあいさつ。続いて、柴山昌彦文部科学大臣からの「教育フォーラムの成功を願う」というお祝いのメッセージが披露され、フォーラムの開催となりました。
「深い学び」を促進する知識の連動と語彙力
特別講演「新学習指導要領の方向性-主体的・対話的で深い学びの実現に向けて-」では、田村学先生が「知識のネットワーク化やパターン化」、「知識の関連性や構造化」などについて検証。「深い学び」とは、知識・技能が関連付いて構造化されたり、身体化されたりして高度化し、駆動する状態に向かうことと論じました。また、「深い学び」を実現する授業のイノベーションとして、児童や生徒の視点に立った教育、教師力の熟達化、学習者を主体とした授業改善、授業の振り返りの重要性などを提言しました。
基調講演『言葉から具体的に考える「楽しくて深い学び」』では、森山卓郎先生が国語科の観点から「言語能力の確実な育成」、「さまざまな語彙力」、「日本語の複雑性」など、言葉を通して考える「深い学び」について解説。学びの基盤となる「語彙力」の質と量の重要性、思考・表現・読解などに活かす「活動的語彙力」の育成を力説しました。「言葉のポケット」を活用した言葉の採集、学んだ言葉の実践活動として「はがき新聞」の有効性についても言及しました。
両講演では先生方がテーマに沿って、会場に質問を投げかけ、参加者同士が相談しながら回答する場面も見られ、終始なごやかなムードでフォーラムが進行しました。
「言葉のポケット」と「はがき新聞」の活用
「楽しく思考力・判断力・表現力を高めるために-はがき新聞等の活用を通して-」のシンポジウムは、森山先生が司会進行を務め、達富先生、髙橋先生、中尾先生、神﨑先生、笠井先生がシンポジストとして登壇しました。
達富先生は、生徒に説明したうえで「語彙学習の年間指導計画」を実践することを推奨。言語活動の下ごしらえ、帯単元、取り立て学習など、さまざまな語彙学習の機会を説明しました。高橋先生は算数の語彙を例にして、算数学習と語彙学習の関連性を検証。「算数はがき新聞」の実例などを紹介しました。
中尾先生は、言葉による見方・考え方を働かせることが「深い学び」につながると検証。「金婚式の孫スピーチをしよう」を例に、日常学習と帯単元学習で教える語彙力について解説しました。神﨑先生は「言葉のポケット」を活用して、言葉に対して生徒が興味・関心を寄せる実例を発表。言葉集めのテーマ、言葉の集め方、言葉の記録方法、「言葉のポケット」交流会などを紹介。笠井先生は「語彙力・表現力の向上を目指した国語科の取り組み」として、新聞記事を活用した「言葉を探す」実践例や言葉マップの作り方を解説。言葉を調べるコツや増やすコツを検証しました。
質疑応答では田村先生が再度登壇。先生方にフォーラムの参加者から多数の質問が寄せられました。語彙学習の指導に関する質問では、語彙活動を生徒に主体的にやらせる下準備について、語彙学習のプリント配布などのほか、言葉を知ることの大切さを生徒に説くことが肝要とアドバイス。授業の振り返りの時間がうまく取れないという質問に関しては、1つの教科だけではなく、全教科で授業の振り返りを徹底させ、習慣化させることが重要と回答。最後に、田村先生が低学年の学習について、「学びの習得が最初にありきではありません。生徒児童の視点に立って、楽しく教師が指導することが深い学びにつながると思います」と締め括り、約5時間におよぶフォーラムは終了しました。
閉会にあたり、当財団の斎藤靖美専務理事が「最後まで長時間のフォーラムにお付合いいただき、誠にありがとうございました。今後も先生方のお役に立てるフォーラムの充実を図ってまいります。8月には大阪で第11回目の教育フォーラムを開催いたしますので、みなさま方のご参加をお待ちしております」と述べました。
満員になった会場では参加者が熱心にメモを取りながら、先生方の講演を聴講されていました。「深い学び」の実現に向けて、多方面から検証することができた有意義なフォーラムでした。
また、フォーラム会場ロビーには、今回のテーマに即した「はがき新聞」などの作品集や資料集が多数掲示され、多くの来場者の関心を集めていました。
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