「引用」は著作者の許諾が必要な場合と、許諾は必要がない場合がある

通信などで作家の文章などを引用する場合があります。
他人の著作物ですから、その場合の扱い方には注意したいものです。

■「複製」と「引用」

前回、授業の過程で行う複製について、「著作権法35 条ガイドライン」の説明をしました。その際、「学級通信」や「学校だより」は授業の範囲外の文書であり、他者の著作物を掲載する場合、著作者の許諾が必要になることを説明しました。
しかし「引用」では、その要件を備える場合は、「学級通信」「学校だより」などでも、著作者の許諾は必要ありません(著作権法32条1項、48条)。

■「引用」の要件とは

著作権法上、無許諾での「引用」が認められるためには次の7要件が必要です。

①「引用する者の著作物」が存在すること、②「公正な慣行に合致する」こと、③報道、批評、研究等の正当な目的があること、④引用の目的にてらして必要な範囲内であること、⑤引用される著作物が従であり、引用する側の著作物が主である「主従関係」があること、⑥「本文」と「引用した部分」が明瞭に区分されていること、⑦出所を明示すること、です。

■「学級通信」と引用

「学級通信」などで、俳句や短歌を示して解釈をしたり、学級通信の文を敷衍(ふえん)したり、こちらの主張の傍証などに使う場合は、「引用する側の著作物」が存在しますので、①の要件を満たします。これに対し、単に俳句などを羅列するだけでは、「引用する側の著作物」の存在はなく、「転載許諾」が必要です。

次に、「学級通信」の場合、スペースにはゆとりがあるのが一般ですので、紙面に著作者・タイトル・出典を明記するのが②の「公正な慣行」に合致することになります。口頭での講演などの場合には、出典は略しても許される場合があります。

③の「引用の目的」については、「学級通信」の場合、広報・啓発などの正当な目的を有していますので、この要件も備えています。

④の「引用のために必要な範囲」は、引用する著作物ごとの吟味が必要です。短歌や俳句など短い形式の著作物は、その全部を引用しても「必要な範囲内」であるといえますが、小説など長い作品については、引用の「量」が問題となります。引用する量が多くなると、⑤の「主従関係」が逆転し、「引用される作品」が主となってしまい、この要件が充足されません。この「主従関係」については、個々の具体的ケースで判定するほかありませんが、学級通信の場合、論文などと違って「学級通信の著作物」の字数はそれほど多くはなく、大量の引用は困難であると考えます。

⑥の本文と引用部分の「明瞭区分」は、引用した箇所を「」でくくったり、改行して行頭を一
段下げたりすることで区分を明示し、⑦の出所明示については、出典・タイトル・著作者を明示することです。

「授業の過程」の枠外で配付される文書について、他者の著作物を使用する場合、以上の要件を吟味して頂きたいと思います。

*著作権等を詳しく知るための参考ホームページ・公益社団法人著作権情報センター http://www.cric.or.jp


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