第5回理想教育財団教育フォーラム

2016年8月28日(日):大阪市北区「大阪第一ホテル」(大阪マルビル)

開催プログラム

基調講演

「言語活動をアクティブに展開するには」 ―はがき新聞の活用を考慮して―

講師
十文字学園女子大学教授(前文部科学省教科調査官(国語)) 冨山 哲也 氏

シンポジウム

「はがき新聞の実践とアクティブな学び」

シンポジスト
大阪市立開平小学校教諭  中島 順子 氏
京都教育大学附属桃山中学校教諭  神﨑 友子 氏
佐賀大学教育学部教授  達富 洋二 氏
十文字学園女子大学教授  冨山 哲也 氏
コーディネーター
早稲田大学文学学術院教授  森山 卓郎 氏

特別講演

「学習指導要領改訂の方向性」 
         ―アクティブ・ラーニングの視点による不断の授業改善―

講師
文部科学省初等中等教育局 視学官 田村 学 氏

主体的・協働的に学ぶアクティブ・ラーニングとは ―はがき新聞づくりの活用を通して―

 当財団は、学習課程における「言語活動の充実」のために、こどもたちの「思考力・判断力・表現力」を育み「考える力」「書く力」を高める方法として「はがき新聞づくり」を推奨してまいりました。2016年7月末現在、「はがき新聞」の実践校数は約1300校にのぼり、財団から教材支援を継続しております。また、「はがき新聞づくり」は新聞教育(NIE活動)としての取り組みをはじめ、国語・社会・総合等多くの教科での実践が報告されており、今後は道徳等での活用が注目されております。
 当財団は、教育界で活躍されている先生、授業で「はがき新聞づくり」を実践している先生を講師に招いた「教育フォーラム」を開催してきましたが、この度その第5回目となる「第5回教育フォーラム」を、250名を超える方々が参加されるなか、「主体的・協働的に学ぶアクティブ・ラーニングとは ―はがき新聞づくりの活用を通して―」をテーマに、基調講演とシンポジウム、特別講演の3部構成で開催いたしました。開会に先立ち、当財団の斎藤靖美専務理事は「皆さまもアクティブ・ラーニングについては、日々、実践に取り組んでおられることと思います。本日は長丁場ではありますが、最後までお聞きいただければありがたく思います」とあいさつを行い、続いて、松野博一文部科学大臣のメッセージが披露され、フォーラムがスタートしました。

基調講演 「言語活動をアクティブに展開するには」 ―はがき新聞の活用を考慮して―

 冨山哲也氏は、まず学習指導要領で「言語活動」の充実が求められた背景をOECDの学習到達度調査(PISA)の結果などを例に挙げながら説明されました。そして、現行学習指導要領がそれらの結果を踏まえ、思考力、判断力、表現力等を育む観点から、すべての教科において「言語活動」を充実させる方針となったと語られました。
 続いて、「言語活動」を充実するための授業における問題点を挙げられたうえで、本当の意味での「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(アクティブ・ラーニング)」を行うには、こどもたちに「きちんと考えてきちんと書かせる、そして書いたものを吟味させる」ことが重要であることを力説されました。その具体的なアクティブ・ラーニングの手法として「はがき新聞」を挙げられ、その活用の有効性や発展性をこどもたちの「はがき新聞」を実践例として示しながら述べられました。さらに、国語以外の教科でも「はがき新聞」が多様な形で展開できることを述べられた後、教科ごとに「何がしっかりと書けていないといけないか」を明確にすることで「はがき新聞」がそれぞれの教科の力をつけるうえで有効なツールになると説明されました。

シンポジウム 「はがき新聞の実践とアクティブな学び」

 シンポジウムに先立ち、森山卓郎氏がアクティブ・ラーニングの定義や身に付けさせたい力をつけさせるために必要な「課題」について説明。こどもたちが身に付けていない力のひとつとして「短く文章を書く力」を挙げ、その力を付けさせるには「はがき新聞」が有効であることを述べられました。そして、どのような課題を設定すれば「はがき新聞」で「短く文章を書く力」を身に付けさせることができるのか、「はがき新聞」がコミュニケーション能力の習得にもつながることを述べられました。
 その実践例として、まず中島順子氏が小学校の音楽科における「はがき新聞」の取り組みについて説明。「はがき新聞」は書くことそのものが目的ではないこと、ツールとして使うことにより「一人では気づけなかった楽曲の良さや楽しさ、深く聴くことができるようになる。これこそがはがき新聞を使ったアクティブ・ラーニングである」と力説されました。続いて神﨑友子氏が「はがき新聞」は国語力の向上としてのツールだけでなく、他者理解や学級の絆を深める特別活動のツールとしても活用できることを説明。「はがき新聞」から学べることや指導のポイント等を説明したうえで、原稿用紙に文章を書かせるのではなく「はがき新聞」を中学生につくらせる意義、さらには「はがき新聞」から習得できる力などについて語られました。また、小中学校の教諭経験もある達富洋二氏は、「はがき新聞」を含めたコンパクトライティングを使ったグループ学習の有効性を述べたうえで、「ほめることよりも、こどもたちに『書けた!』と満足させることが重要」と語られました。さらに、学習課題の設定の仕方を示されたうえで、小学生では教科書を、中学生では新聞記事を使ったコンパクトライティングの例を紹介されました。
 その後、森山氏からワークショップの提案があり、参加者の方々が「私の夏休み」等をテーマに「はがき新聞」を書く場面も。完成した「はがき新聞」を隣の席の方と交換し合うことでコミュニケーションを深め合いました。

特別講演 「学習指導要領改訂の方向性」 ―アクティブ・ラーニングの視点による不断の授業改善―

 田村学氏は、まずOECDの学習到達度調査(PISA)の結果から、「自信がない」「役立ち感がない」「考えて行動することが苦手」等、日本のこどもたちの傾向について述べられました。さらに2030年の社会や企業が求める力、学校教育に対する保護者の意識調査結果を紹介したうえで、今後、こどもたちに育成すべき資質・能力を紹介。そして、それを身に付けさせるためにはアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)の視点に立った授業が必要であること、本当の意味でのアクティブ・ラーニングを実践するには、探究的な学習や「言語活動」だけでなく、他者との対話がポイントになることを、小学生の実際の授業ビデオを流しながら説明されました。また、こどもたちの充実感や達成感などの「手応え感覚(ポジティブ感情)」や、「言葉にして文字で刻む」などの実践行動もアクティブ・ラーニングには欠かせないことも力説されました。

 質疑応答の後、閉会の挨拶に立った当財団の五十嵐事務局長は「今日、ここにご参加いただいた皆さまが、これまでの知識と経験をもとに良い活動をしていただくことが当財団の唯一のPR活動となります。これからもよろしくお願いいたします」と挨拶を述べました。約5時間の長丁場となりましたが、いずれの参加者も熱心にメモを取りつつ、真剣な面持ちで講演の内容に耳を傾けられていました。また途中、ワークショップや参加者同士の交流を促す場面が設けられたことにより、参加者ご自身がアクティブ・ラーニングを実感する、そんなフォーラムとなりました。