ブックタイトル季刊理想 Vol.129

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概要

季刊理想 Vol.129

季刊理想 2018秋号 ◆ 78 もともとアクティブラーニング施策は大学教育で始まった アクティブラーニングは、大学教育の講義一辺倒(チョーク&トーク型)の授業を脱却するために導入された学習法である。講義を聞くという「内化(インプット)」の活動だけでなく、書く・話す・発表するといった「外化(アウトプット)」の活動も組み込み、内化+外化の「アクティブラーニング型授業」を目指したのであった。最後の砦となっていた高等学校の教育 現行の学習指導要領改訂まで、教育改革の主なターゲットは義務教育としての小学校・中学校であった。高等学校は、教育改革にメスが入らない最後の砦だといわれていた。講義一辺倒、チョーク&トークの授業形態は、大学のみならず高等学校のものでもあった。 2014年末に学習指導要領を改訂して初等中等教育にもアクティブラーニングを拡げようとした動きは、最後の砦であった高等学校の教育にメスを入れるものであった。それは、大学教育、大学入試、高校教育の三位一体の高大接続改革と並行してなされたことからもわかる。小学校、中学校までアクティブラーニング論を下ろさなければならないとまで、私は考えていなかったが、少なくとも高校2年生くらいまでの間に大学や仕事・社会で必要とされる資質・能力の基礎が仕上がる発達事情を鑑みて、高校教育の改革、高大接続は必然であった。アクティブラーニングだけが求められたわけではないが、少なくとも大学受験にあまりに傾斜する高等学校のチョーク&トーク型の授業は、アクティブラーニングによって変えられなければならなかった。小中学校にもアクティブラーニングを下ろす格好に――「主体的・対話的で深い学び」の登場 ところが、学習指導要領を改訂するとなると、ついてくるのが小学校・中学校である。高等学校だけ学習指導要領を改訂するわけにはいかない。目指すところは違っていても、実質的な学習活動としてはアクティブラーニングと類似する言語活動の充実施策が、10年前の学習指導要領で打ち出されたばかりだ。その言語活動をすでに推進している小学校・中学校にも「アクティブラーニングを」という話になるのだから、何が違うのかと批判が噴出するのは当然といえば当然である。 しかも、大学教育で背景となった講義一辺倒の授業など、小学校ではあり得ないという話になり、話が錯綜していく。中央教育審議会で学習指導要領改訂を審議する主な委員は、幼稚園や義務教育の専門家、教員、関係者ばかりで、高等学校の事情に通じる者は少なかった。委員であった高等学校の教員でさえ、高大接続や大学の事情には通じていなかった。国家施策の限界を見た瞬間でもあった。義務教育を基礎としすぎた審議の結果は、承知のとおり、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点)」であった。桐蔭学園トランジションセンター所長・教授 溝上 慎一先生小中学校へのアクティブラーニング施策の意義