ブックタイトル季刊理想 Vol.129
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季刊理想 Vol.129
第 9 回 理想教育財団教育フォーラム通じて、そのような行為を見取ることができたからこそ、道徳性の評価は可能だったと思います。全教育活動を通じて行う「道徳教育」という範囲では、これからも従来通り、子どもたちのよさとしての道徳性を積極的に評価していただきたいと思います。 ただし、今回の教科化により、道徳教育の要となる「道徳科」においても評価を行うことになりました。新たに加わる道徳科では、授業の範囲のみで見取って評価を行います。ここが、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育における評価と大きく異なる点です。道徳科の評価の在り方 道徳科の評価については、「児童(生徒)の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める」と示されています。ここで注目していただきたいのは「継続的に」という言葉です。ここには、たった1時間で評価をするのではなく、年間や学期という期間での成長の様子を評価してください、という意味が込められています。 また、道徳科の評価の在り方については、「記述式とする」「大くくりなまとまりを踏まえた評価とする」「個人内評価として行う」「多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視する」「学習上の困難さの状況等を踏まえた指導及び評価上の配慮を行う」「調査票に記載せず」などのポイントも示されています。ねらいをゴールとした評価は行わない 具体的に見ていきましょう。教師は、指導の明確な意図に基づいて、授業の「ねらい」を一般的には、道徳的価値の理解や道徳性を構成する諸様相等を端的に示して設定します。当然、教師はこのねらいを実現しようと、努力します。しかし、道徳科では、そのねらいをゴールとして、児童生徒の評価を行わない、ということです。 実際、道徳性の諸様相がどれだけ育ったかを客観的に評価するのは困難です。また、授業を通じて道徳的価値がどれだけ理解できたか、という点についても、道徳科ではそもそも知的な理解のみを求めていません。ここが、理解させることを目的として評価する、ほかの教科と大きく異なるところです。 重視すべきは、児童生徒の学習状況や成長の様子、より具体的に言えば「児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか」「道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているか」という点です。教師にはこのような児童生徒の学びの姿について、道徳科の学習活動に着目しながら、見取っていくことが求められているのです。 併せて、その際に忘れてはならないのは、先ほど申し上げた「継続的に」という言葉です。実際、児童生徒は、ある授業では数多く発言できても、ある授業ではまったく発言できないというケースも出てきます。そのため、学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、進歩の状況をトータル的に確認することが大切になってきます。 ちなみに、一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているかどうか、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかという学習状況の姿については、学習指導要領の解説で具体的に例示をしていますので、ぜひ参考にしてください。これから配慮すべきこと 教室の中には発言することが苦手だったり、文章表現が得意でなかったりする児童生徒もいます。先生方は、そうした児童生徒にも配慮しながら、あるときは書く活動を行う、あるときはグループやペアでの交流活動を行うなど、児童生徒一人一人が表現しやすい工夫をしてきたことと思います。そうした活動も含め、児童生徒の多様な学びの姿が評価できる道徳科の学習をぜひ目指していただきたい。それこそが「主体的・対話的で深い学び」のある授業、そして「考え、議論する道徳」につながるとも言えます。 評価は教師にしてみれば、自らの授業を振り返るためのものであり、児童生徒にしてみれば自らの成長を実感できるものです。そのように指導に生かされ、児童生徒の成長につながる評価、つまり「指導と評価の一体化」という視点も欠かせません。 教師の明確な意図を明らかにするためにも、あらかじめ指導案を作ることは大切です。しかしながら、授業はその指導案の通りに進むとは限りません。特に、道徳科の授業は毎時間がメイク・ドラマです。深い学びにたどり着くための答えはどこの指導書にも示されていません。答えは目の前にいる子どもたちの中にあります。だからこそ児童生徒のリアルな学びの姿を評価していただきたい。同時に、ぜひ、先生方には何よりも道徳科の授業を楽しんでいただきたいと思っています。4 ◆ 季刊理想 2018 秋号