ブックタイトル季刊理想 Vol.129

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概要

季刊理想 Vol.129

12 ◆ 季刊理想 2018 秋号 ⑧  森山 卓郎  早稲田大学文学学術院教授【句点と読点、どっちがどっち】  「、」と「。」、どっちが句点でどっちが読点でしょう。今は「句」というと文よりも小さい単位のことですが、明治のころは、文のことを「句」と呼ぶこともありました(中国語でも「句」は文のこと)。私は学生時代、なんとなく混乱した覚えがあります。はい、もちろん、正解は文の終わりに打つ「。」が句点、途中に打つ「、」が読点です。【「私□帰ります」調査!?】  日本語では、ほかに補助符号として、「――」(ダッシュ)や、「……」(点々、三点リードとも)なども使われます。去年、首都圏51人の大学生に、「私□帰ります」の□にどんな符号を入れるかで、ポーズ(間)が一番長いのはどれか、最も悲しい気持ち、最もうれしい気持ちを表すのはどれか、などを聞いたことがあります。①  私、帰ります。②  私。帰ります。③  私・・・・帰ります。④  私――帰ります。  まず、ポーズが最も長いものとして選ばれたのは、「・・・・」と「――」が大体半々(それぞれ49%と47%)でした。句点も間が空きそうですが、選んだ人はわずか 4%。確かに、例えば漱石も、長い間(ま)などで口調が変わる時などには、ダッシュを使っています。「さうですか。――さう、それは云ふ筈がありませんね、始めて会つた貴方に。云ふ必要がないんだから」(夏目漱石『こころ』)は、ちょっと考えている間です。句点と共に使われています。【最も悲しい気持ちを表すのは?】  さて、感情はどうでしょう。「最も悲しい気持ち」を表す場合にどれを選ぶかも聞いてみました。多数派は、「・・・・」でした(66%。ほかに「――」も26%、句点も4%ありました。残りは決められないという人です)。「私・・・・帰ります。」には、間を長くとった少し暗そうな印象がありそうです。  一方、「最もうれしい気持ち」を表す場合として選ばれたのは、「私、帰ります」●もりやま たくろう早稲田大学文学学術院教授。京都教育大学名誉教授。専門は日本語学。近著に『教師コミュニケーション力』( 明治図書 )、『日本語・国語の話題ネタ』(ひつじ書房)『日本語の〈書き〉方』(岩波ジュニア新書)など。「私 ・・・ 帰ります」の気持ち?(56%)でした。「・・・・」を選んだ人はいませんでした。ほかに「――」を選んだ人が8%、句点を選んだ人が6%、わからないとした人が32%、ありました。どちらかと言うと、うれしい時には元気よく、あまり間をとらずに発音するというイメージがあるのでしょう。   文章を書く時、句読点のほかに、「・・・・」や「――」もいろいろと使えます。――どんな符号を使うのが効果的か、を考えるのも・・・・・なんだか楽しいですね!19