ブックタイトル季刊理想 Vol.124
- ページ
- 2/24
このページは 季刊理想 Vol.124 の電子ブックに掲載されている2ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 季刊理想 Vol.124 の電子ブックに掲載されている2ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
季刊理想 Vol.124
2 ◆ 季刊理想 2017 夏号 季刊理想 2017 夏号 ◆ 1季 刊教育とコミュニケーションの研究情報誌2017 夏号 Vol.124ESSAY特集RESEARCH学校と法律 <第36回>人間と鳥の世界 第5回CONTENTS一人一業主義と一人一成主義山本 恒夫先生●筑波大学名誉教授第13回「プリントコミュニケーションひろば」入賞作品発表●選考概要●入賞作品一覧 ●最優秀賞・理想教育財団賞 受賞者インタビュー学校における各種通信の実態と教育効果に関する調査研究報告① 夏の物語 ― 比べ読みのすすめ中洌 正堯先生●兵庫教育大学名誉教授漢字のテスト森山 卓郎先生●早稲田大学文学学術院教授地域への愛着と誇りを育む体験学習を展開白川 勇一校長先生●岐阜県関ケ原町立今須中学校カッコウの托卵と卵擬態進化の謎中村 浩志先生●信州大学名誉教授/ 中村浩志国際鳥類研究所代表理事山本周五郎、スティーヴン・フォスターと著作権神谷 信行先生●弁護士 はがき新聞原稿用紙(俳句)・透明ポケット「ミテミテ」新聞教育と連動したはがき新聞の実践子どもたちの「書く」「話す」力が向上菅原 千聡先生(現・岩手県一関市立東山小学校講師)●岩手県一関市立奥玉小学校究極の“ ひらかれた学校”で、日本人としての“ アイデンティティ”を形成する菅沼 一夫先生●カトマンズ補習授業校校長19213371516わが校自慢 第3 回助成品紹介 第3 回はがき新聞活用レポート○ 172122言葉の歳時記○ほっと一息・ことば楽! ●財団だよりBOOK 紹介海外からのお便り9102715211111 昭和40年代の終わり頃から、近代日本人の精神構造とその変容過程を明らかにしようと思い、古本市へ通って自伝・伝記を集めていました。当時は、有名無名の実業人、政官界人、教育者、芸術家、芸能人等々の自伝・伝記が安く手に入りましたので、社会・風俗・娯楽・生活関係の資料と合わせ分析し、昭和55年(1980年)頃から論文にし始めました。ところが、平成に入ると、我が国が生涯学習社会の実現を目指すことになったため、生涯学習関係のことに追われて、中断状態になってしまいました。 東日本大震災は我が国に大きな打撃を与えましたが、社会通信教育受講者の多くも元気を失いました。その人達に、困難に立ち向かって道を拓いた明治・大正・昭和の人々の心を伝えてはということになり、実業人を中心として『時代を生き抜く心のマップ』(社会通信教育協会、2012年、直販)をまとめました。 藤原銀次郎(明治2年~昭和35年、1869年~ 1960年)といえば、製紙王といわれた人ですが、日本人には命をかけて仕事をするところがあり、それは日本人の精神の発露だといっています(藤原銀次郎述『苦楽談片』昭27、164頁)。常に最善を尽くし、最良の仕事をするために、仕事に命をかけるというわけですが、その最良の仕事をするために、多くの実業人が一人一業主義、一生一事業主義を唱えていました。エビスビールで日本のビール王となった馬越恭平、長崎カステラ文明堂創業者の中川安五郎、ヤンマーディーゼル創立者の山岡孫吉など枚挙にいとまがありません。 典型的なのは、小林作太郎(明2年~昭12年、1869年~ 1937年) で、彼は小学校しか出ていない技術者ですが、明治21年(1893年)に民間電機工場の草分けといわれる田中製作所―すぐに三井家に売られ芝浦製作所となる―に入り、のちの東芝の基礎を築いた一人といわれています。明治44年(1911年)に常務となり、大正10年(1921年)に芝浦製作所を退社していますが、その生涯は芝浦製作所一筋で、現役時代には他からのさまざまな役職就任の勧誘を断り続け、退社してからでさえ次々と舞い込む勧誘を断り続けました(木村安一『小林作太郎伝』昭14、190頁以下)。 理想科学工業の創業者・羽山昇(1924年~ 2012年)の生涯を追った植松活三『夢こそ我がいのち』(サブタイトル「三畳間のガリ版工場を世界の理想科学に育て上げた羽山昇の夢人生」、ダイニチ出版、2017年、非売品)の“本の帯”に、“理想科学が未曽有の困難に陥った昭和40年代。羽山は「一人一人が挑戦だ。一人一成主義でいこう」…と檄をとばした。”とあるのを見て、ハッとしました。最良を求めての一人一業主義、開発こそ命という一人一成主義は、まさに実業の発展を根底のところで支える精神の1つなのではないでしょうか。一人一業主義と一人一成主義筑波大学名誉教授 山本 恒夫●山本 恒夫(やまもとつねお)東京教育大学(現筑波大学)大学院博士課程出身、教育学博士。専門:生涯学習学 。筑波大学教授、大学評価・学位授与機構教授、八洲学園大学教授、同学長、国の生涯学習審議会委員( 社会教育分科審議会会長)、中央教育審議会委員(生涯学習分科会会長)などを歴任。日本生涯教育学会会長を経て、現在同学会常任顧問、同学会生涯学習実践研究所顧問。(一財)社会通信教育協会顧問、(公財)理想教育財団評議員。著書:『21 世紀生涯学習への招待』など多数。