ブックタイトル季刊理想 Vol.121
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季刊理想 Vol.121
子どもたちの傷ついた心のサポートに注力――陸前高田市は被災地の中でも、甚大な被害を受けた地域の一つです。これまで教育委員会として、どのような点に力を注いでこられましたか。 津波被害で多数の職員が犠牲になり、被災直後は教育委員会自体が機能停止に追い込まれた上、市内の小中学校の被害も著しいものがありました。急ピッチの準備を経て、4月20日の学校再開にこぎ着けることができましたが、教育委員会としてはさまざまな課題を抱えていました。その一つが子どもたちの心の問題への対処です。 市内の児童生徒1880人のうち、孤児が32人、遺児が115人を数えるなど、親や家族を亡くした子どもたちも少なくありませんでした。そこで、心にダメージを受けた児童生徒の心のサポートのために、臨床心理士等によるカウンセリング、教員を対象にした心のサポート研修会、教員の加配など、陸前高田市の復興への歩み被災から5年を振り返ってちは、体育館が使用できないハンデを乗り越え、教室に卓球台を並べて練習に励み、震災の翌年度にインターハイに出場、地域に明るい話題をもたらしてくれました。小中学校の児童生徒も、廊下など限られた空間を利用して、休み時間に体操したり、体力等の維持に努めています。支援される側から支援する側へ――震災から5年が経過しました。現在の大きな課題は何でしょうか。 震災からの復興が順調に進み、教育活動はほぼ通常の状態に戻ってきています。しかし、解消されない校庭の仮設住宅、保護者の将来への生活不安、コミュニティの崩壊と再構築など、多くの課題が残っています。 さらに、私たちの頭を悩ませているのが児童生徒数の減少です。現在の児童生徒数は1300人強と、この5年間で550人以上が減少しています。資料をもとに、現在の復興状況を語る山田市雄・陸前高田市教育委員会教育長 東日本大震災で市の人口の約7%、市職員の約25%が犠牲になった陸前高田市。教育行政における被災の影響、そしてこれまでの復興の歩みはいかなるものだったのか、加えて、現在、どういう課題を抱えているのか。理想教育財団ではこのたび、陸前高田市のコミュニティの拠点組織に印刷機を助成(P9で紹介)したのを機に、山田市雄・陸前高田市教育委員会教育長にお話を伺いました。総合的に支援をしてきました。現在でも、きめ細かなサポートを継続しています。――学力面への影響はいかがでしたか。 当初、仮設住宅で暮らす児童生徒は全体の約3割にも及びましたが、仮設住宅は狭いため、落ち着いて家庭学習を行うのが難しい状況にありました。そこで、文科省からの支援を得て、仮設住宅に住む中学生、高校生に対し、市内の4つの学校を会場に実施したのが「学びの部屋」の開設です。平日の夜間、21時まで、教員OBを中心にした「学習支援員」が生徒たちの自学自習を見守っています。日曜日には学生の皆さんも加わって、子どもたちの学習支援にあたっています。――運動・体力面の影響も大きかったのでは。 校庭を含めて、子どもたちの遊び場、運動場所がなくなり、体力や運動能力は震災前に比べてのきなみ低下しました。でも、児童生徒は極めて前向きです。例えば、県立高田高校の卓球部の部員た季刊理想 2016 秋号 ◆ 7