ブックタイトル季刊理想 Vol.121

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概要

季刊理想 Vol.121

●かみや のぶゆき1983年弁護士登録。社団法人著作権情報センター主催「市民のための著作権セミナー」の講師担当。『知って活かそう!著作権』『編曲家の権利』など著書多数。学校と法律<第33回>弁護士 神谷 信行●かみや のぶゆき1983年弁護士登録。社団法人著作権情報センター主催「市民のための著作権セミナー」の講師担当。『知って活かそう!著作権』『編曲家の権利』など著書多数。学校における日刊新聞の利用で注意したいこと授業や先生方の研修などで、新聞を資料としてコピーすることがあると思います。その際、許諾が必要になるケースがありますので、ご注意ください。は教員の見識を高めるためのものですから「正当目的」の要件は満たしています。新聞記事は一つの記事が何頁にもわたることはないと思われますので、「必要な範囲」の要件も満たしていると考えられます。問題は、「主従関係」の点で、コピーした分量よりも、これを論評する講師などの意見の方が質的・量的に上回っていることが必要です。 コメントされた言葉を活字に起こし、利用する新聞記事の文字数と比較して、コメントの方が質的量的に「主」であることを確認しなくてはなりません。そして、そのコメントに独創性があって無形の著作物と認められ、かつ、出所が明示されていれば、「引用」に該当すると考えられます。「授業の過程」以外は許諾が必要 「主従関係」の認定については、グレーゾーンに当たる場合が多く生じると思いますが、個々のケースについて具体的に吟味するほかありません。「主従関係」が認められない場合は、単なる資料として新聞のコピーを配布するということになり、「引用」にはあたらず、複製許諾が必要となります。 先の質問で、地方紙に問い合わせた時、許諾料は不要との回答だったとのことですが、この回答はサービスで権利行使をしなかったか、もしくは「引用」に当たることを想定して許諾不要としたものと思われます。 ちなみに、日本弁護士連合会では、各種委員会の討議の際、日刊新聞をコピーして配布することが頻繁にありますが、新聞社に対して複製許諾料を支払っています。「授業の過程」でのコピー以外については、複製許諾が必要なことをご記憶いただきたいと思います。 新聞のコピーは許諾が必要か 先日、ある小学校の校長先生から次のような質問を受けました。「教員研修で、日刊新聞のコピーを教員全員に配布したいと思い、新聞社に問い合わせました。地方紙からは特に料金を請求されませんでしたが、全国紙からは1080円の支払いを求められました。これを支払う必要があるのでしょうか?」 教育現場では、授業の過程で著作物を複製することについて「許諾不要」の例外規定(著作権法35条)があるため、「学校でコピーは自由にできる」と誤解している方が多いように見うけられます。 コピーがフリーなのは、あくまでも「授業の過程」における複製であり、授業に使わない資料のコピーはこれに該当しません。 先の質問にあった「教員研修」は、「授業」に該当しないため、引用の範囲を越えた利用については、複製許諾が必要となります。引用と認められる7つの要件 著作権法上、無許諾での「引用」が認められるためには次の7つの要件が必要です。①「引用する者の著作物」が存在すること、②「公正な慣行に合致すること」、③報道、批評、研究等の正当な目的があること、④引用の目的にてらして必要な範囲内であること、⑤引用される著作物が従であり、引用する側の著作物が主である「主従関係」があること、⑥「本文」と「引用した部分」が明瞭に区分されていること、⑦出所を明示すること。 質問されたケースでは、新聞の紙面をコピーし、これを配布するという態様での使用ですが、教員研修10 ◆ 季刊理想 2016 秋号