ブックタイトル季刊理想 Vol.120
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季刊理想 Vol.120
季刊理想 2016 夏号 ◆ 13●学級力向上プロジェクト ●教師と子どもが協働する学級づくり 学級力向上プロジェクトとは何か、またその内容について、田中博之 早稲田大学教育・総合科学学術院教授監修『学級力を高めるはがき新聞の活用』(理想教育財団発行)では次のように記されています。《 学級力向上プロジェクトとは、子どもたちが学級力づくりの主人公となって、目標達成力、対話創造力、協調維持力、安心実現力、そして規律遵守力からなる学級力を高めるために、学級力アンケートで自分たちの学級の様子をセルフ・アセスメント(自己診断・自己評価)することを通して、毎日の学習や遊びの中で意図的・計画的に取り組む実践的な仲間づくりの活動である。 今日大きな問題となっているいじめを未然に防止し、「笑顔や拍手が生まれるクラス」をつくるため、そして、「明日からも来たくなる明るく安心できるクラス」を生み出すために、教師と子どもがともに協力して学級づくりを行えるように開発した、新たな学級経営のシステムが、学級力向上プロジェクトである。》 その具体的な内容は、次のようなものです。《 学級力アンケートにはじまり、学級力レーダーチャート、スマイルタイム、スマイル・アクション、スマイル・ミーティングという多様な手法や道具立てが含まれている。》参考文献: 田中博之編著『学級力向上プロジェクト』 金子書房、2013あくまでもそれに向かおうとする個人の志が高ければ、よい学級になるのです。主張と寛容性のバランスの中で、どう自己決定能力を養うかが重要になります。「学級力」から「学校力へ」 学級力は単発で行っても効果が小さいのも事実です。やはり学校全体で行う「学校力」へと発展させることが重要でしょう。ある小学校では、敬語の使い方、仲直りの仕方、職員室の入り方なども含め、6年生が1年生をしっかりサポートしています。この学校はいずれの学年も単学級です。単学級の場合、いじめや不登校が起こりやすい傾向にありますが、この学校ではそうした問題は発生しません。異年齢交流の成果でしょう。さらに、サポートする側の6年生も1年生に感謝されることで、保護者に対して感謝の気持ちを素直に伝えられるようになります。 なぜ多様な子どもたちを一つの教室に集めて、人間が人間を教えるのか。方法論だけでなく、そこに理念をどう埋め込むかが重要です。実際、学級力という制度や方法論のみを取り入れてもうまくいきません。アクティブ・ラーニングを行うにも、学級の力がなければ共倒れになってしまいます。 過去は変えられないが未来は変えられるといいますが、未来を変えたら過去も変えられます。目的を持って前を向いて頑張ることで、どんなにつらかった過去も、「あれがあったからこそ今がある」と思えるようになるのです。皆さんの研究の輪が広がり、日本全国の子どもたちが幸せな学校生活が送れますよう、祈念申し上げます。に、話し合いと実践で、単なる仲良し集団を越えた、よりよい集団を自らつくっていくことが重要です。規律や我慢を強いるだけでは、活力は生まれてきません。 ある小学校で、自治と言語活動を取り入れたところ、最下位だった学力が市内で一番になったという事例もあります。まさに言語活動が汎用的な力を持った実例といっていいでしょう。 加えて、一人一人が健全な自尊感情を持てるような学級づくりも欠かせません。健全な自尊感情がなければ、将来への希望や目標が持ちにくく、指示待ち傾向が強くなります。また他者への関心が薄く、望ましい人間関係が築きにくいために、支持的風土の学級は形成されません。さらに、自立・協働・創造が困難となり、学力の向上も望めなくなります。 だからこそ、他者と比較して得られる「社会的自尊感情」だけでなく、より根源的な「潜在的自尊感情」が得られる学級づくり、そして個が育ち、集団も育つ集団活動を目指すことが大切です。 望ましい集団活動の展開のためにも、合唱コンクールなどの特別活動をうまく活用していただきたい。ただし、目的をはき違えてはいけません。例えば合唱コンクールなどにおいても、一番を目指すことも大事でしょうが、みんなで努力することによって集団がまとまることの方が重要です。「競争」よりも「共創」を目的にすべきです。 学級目標をつくる場合でも、まず個々の目標を定め、その上で集団目標を決める。この順番を誤ると、お互いに監視し合うような、集団主義教育になってしまいます。要は、学級目標自体が大事なのではありません。