ブックタイトル季刊理想 Vol.120
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季刊理想 Vol.120
●なかす まさたか1938 年、北九州市生まれ。兵庫教育大学名誉教授。元兵庫教育大学学長。国語教育探究の会・国語論究の会顧問。国語教育地域学の樹立を目ざし、「歳事(時)記的方法・風土記的方法」を提唱する。著書に『国語科表現指導の研究』(溪水社)、『ことば学びの放射線』(三省堂)ほか。言葉の歳時記⑰兵庫教育大学名誉教授中 洌 正 堯憶えて活用したい夏の俳句 現行の小学校国語教科書に載っている俳句から50句ばかりを選んだ。夏は12句である。「憶えて活用する」というのは、憶えておいて、身の回りのものごとやできごとに接するとき、その見方、捉え方に習ってみようというものである。(俳句は読みやすい現代表記に統一した。) 〈目には〉とあるので、「耳には」と誘われる。初夏の象徴を視覚、聴覚、味覚で端的に捉えたもの。 人のいとなみの三句である。 〈万緑〉は、見わたすかぎり草木が茂り緑一色であること。その中にあって、わが子に小さな白い歯が生えはじめた。ともに生育する万緑と白い歯の対比。 夏草の生えた城跡に、戦いくさで倒れた兵士たちの夢(情念)をたどる。『おくのほそ道』の「平泉」の条くだりにある句。 〈五月雨〉は今日の「梅つ雨ゆ」のこと。『おくのほそ道』の「最上川」の条にある句。 小動物の二句。前者は、蛙の相す も う撲で、まさに「鳥獣戯画」の世界である。 昆虫の三句。どんな虫か、また、どんな動きをする虫かが分かれば、それぞれの句にうなずくことができる。「蝉」は、『おくのほそ道』(立石寺)での景。「赤い椿つばき白い椿と落ちにけり 河東碧梧桐」の春の句と比べてみる。*俳句学習のヒント* 俳句の情景を思い描いて、そこから聞こえてくる「音」や「声」について話し合う。 取り上げた12句のうち、例えば、「夏草や」の句は、音が聞こえる、聞こえないで意見が分かれるであろう。どんな音かとなるともっと分かれるにちがいない。 発展して、『おくのほそ道』の全62句の音風景をたずねてみよう。表現から音を聞きとる力が鍛えられる。季刊理想 2016 夏号 ◆ 9目には青葉山ほととぎす初がつお山口素堂目には青葉山ほととぎす初がつお山口素堂目には青葉山ほととぎす初がつお山口素堂万ばんりょく緑の中や吾あこ 子の歯生はえ初そ むる中村草田男さじなめて童わらべたのしも夏氷山口誓子夏河を越すうれしさよ手に草ぞ う り 履与謝蕪村夏草や兵つわものどもが夢の跡松尾芭蕉五さみだれ月雨を集めて早し最も がみがわ上川松尾芭蕉やせ蛙がえる負けるな一茶これにあり小林一茶青蛙おのれもペンキぬりたてか芥川龍之介翅はねわっててんとう虫の飛びいずる高野素十閑しずかさや岩にしみ入る蝉の声松尾芭蕉ひっぱれる糸まっすぐや甲かぶとむし虫高野素十牡ぼた ん 丹散ってうちかさなりぬ二三片与謝蕪村