ブックタイトル季刊理想 Vol.119
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季刊理想 Vol.119
●シンポジウム●「書けない」から「書けた」へ自己肯定感を育むはがき新聞 「書くことが苦手」という児童生徒は多いです。市教育センターに併設されている不登校の子を対象にした適応指導教室でも、書くことに抵抗感を持っている子どもたちが多くいます。 短い文章で絵もかけるはがき新聞なら、どの子も書くことを楽しめるのではないかと、展覧会の見学後はがき新聞を書くことを勧めてみました。ところが、完成したのは3名。途中で諦めてしまった子が4名。1名は名前だけ書いて、あとは何も書けずに終わったそうです。つくるからには完成させないと、子どもたちは書けなかった事実に傷つきます。失敗経験をさせてしまったかと申し訳なく思いました。 そこで、羽田空港への校外学習をテーマに行った2回目のはがき新聞づくりは、私も指導者として入り、スモールステップで指導しました。 指導の時に気をつけたのは、書けない子の苦手なことを「見える化」することでした。「書く材料」「文章表現」が見えると、格段に子どもたちは書きやすくなります。 例えば「書く材料」を見つけるために、校外学習での発見を話す「おしゃべりタイム」を設けます。その後発表したことを黒板に書いていき、子どもたちが語り始めたエピソードをもとに言葉を付け足していきます。すると「広い格納庫」のような見出しになります。子どもたちは黒板に書かれた言葉を見ながら、新聞の見出しを自分なりにアレンジすることができます。 書くのが苦手な子どもたちには、文章の見本を示すこと、繰り返しコンパクトテキストを書くことも大切です。書き慣れてくると、もっと書きたいと、マス目を無視して小さく書いたり、より多く書ける用紙を求めたりする子どもが必ず出てくるようになります。 このように道筋をつけてあげれば、書くのが苦手な子どもたちも書けるようになっていきます。実際、前回は名前だけしか書けなかったA君を含め、参加した子どもたち全員が2時間ではがき新聞を完成させました。その後A君は、書く学習を前ほど嫌がらなくなりました。はがき新聞に取り組む中で、書くことへの抵抗感が薄れ、自信を取り戻したのかもしれません。 しかし、気を付けてほしいのは、一人につきっきりの支援で子どもを傷つけることです。子どもたちは、できれば自分で書きたい、自分でわかるようになりたいのです。思春期に入ればなおさら人の目が気になります。何をどう書けばいいのか、スモールステップで全体に指導をする。個別の支援はさりげなく。そうして、どの子も書けるようにすることが、子どもたちの自己肯定感を育むことになります。子どもたちが、書くことを喜びと感じるように、実態に合わせて実践を重ねていただければと思います。はがき新聞の実践とアクティブな学び(中学校)?「コンパクトに書く」からこそできること はがき新聞を国語科の学習に取り入れて…?結果でも、書くことへの苦手意識を持つ生徒の割合は、全国平均より相当に小さいことが分かりました。 はがき新聞の作成を指導する上で気をつけてきたことが4点あります。1点目は、相手意識を持つということ。誰に向けて書くのかを明確にして、相手を思い浮かべることで、目的が明確になり、書く内容が変わります。 2点目は、伝えたいことを絞ること。一番伝えたいことは何かを明確にさせます。そのためにも、見出しに一番伝えたいことを書くように群馬県桐生市立清流中学校教諭宮前 嘉則先生させたら必ず掲示するということです。文字数が少なく、作成時間も少なくてすみますから、無理なく継続できますし、ビニールのポケットに作品を入れる仕方で、掲示しています。 このようにはがき新聞は、文字が少なくて、気軽にできるし、継続もしやすい。ただし、注意も必要です。単にラクな取り組みだととらえてしまうと、効果的な実践にはならなくなってしまうのではないかと思います。 実際、はがき新聞の文字数は限られているからこそ、思考判断を働かせることにもなり市川市教育委員会教育センター指導主事杉本 生美先生季刊理想 2016 春号 ◆ 7