ブックタイトル季刊理想 Vol.119
- ページ
- 6/24
このページは 季刊理想 Vol.119 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 季刊理想 Vol.119 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
季刊理想 Vol.119
●基調講演●現行の指導要領の改訂以来、言語活動の充実が進展 現在、学習指導要領改訂に向けた議論が進んでいますが、およそ10年前を振り返ると、当時は現行の学習指導要領の改訂に向けた議論が展開されていました。結果的に、2011年に現行の学習指導要領は改訂されましたが、この中で特に重視されるようになったのが「言語活動の充実」です。 その辺りの経緯をここで振り返ってみましょう。まず、2004年2月の文化審議会が「これからの時代に求められる国語力について」という答申を提出、国語が果たす3つの基盤を提示しました。さらに、2003年実施のPISA調査で読解力問題に対する課題が浮き彫りになったことを背景に、文部科学省では「読解力向上プログラム」や「言語力育成協力者会議」の報告書の取りまとめなどを進めます。こうした流れを受けて、言語活動の充実が現行の学習指導要領に位置付けられることになりました。 以来、この考えに基づいた教育は小学校から高校まで各学校に広く浸透し、全国学力・学習状況調査においても明らかなように、さまざまな成果が上がっています。 実際、今日お集まりの皆さんも、学校教育における言語活動の充実の進展を、肌身に感じておられると思いますが、では次のアクティブ・ラーニングの展開において、考えておかなければいけないことは何か。それは、言語活動の質的な向上だと思います。この目標に向けて、私はコンパクトなテキスト、たとえばはがき新聞のような形式が、大変有効なのではないかと思っています。言語活動の質の充実につながるはがき新聞の5つの特徴 私は、はがき新聞の有効性ということについて、次のように整理をしています。 1つ目は内容を吟味しながらまとまった文章を書くことで、確かな理解や認識が形成されるということです。文章そのものが短い、少ないわけですから、書いた後に見直す時間がある。いわば吟味することによって、理解や認識が深まると考えます。 短時間で書けるため、試行錯誤ができるという点が2つ目。書いてみたけれど、もう少しうまく書きたいとか、書いてみて友達と交流して、もう一回書き直してみたいということが、はがき新聞のようなコンパクトなテキストの場合は可能なのではないかと思います。第2部 基調講演言語活動をアクティブに展開するには ―はがき新聞の活用を考慮して―十文字学園女子大学教授(前文部科学省教科調査官【国語】)冨山 哲也先生 3つ目は、題名、見出し、構成、図表等の工夫により、オリジナリティを持たせられるという点です。発達段階にもよりますが、小学校の高学年以降であれば、あえてレイアウト例を示さずに、子どもたちに任せてみる。それがオリジナリティの発揮につながっていきます。子どもたちのやる気にもかかわりますし、創意工夫という点でも大事なことだと思います。 4つ目は、短い時間の中で、互いの考えを伝え合う手段になるということです。はがき新聞を友達と読み合うことで、考えの交流を図ることができます。 5つ目が、活動の積み重ねによる習熟が図られるとともに、文字数、紙面の拡大などの発展性があるということです。時にははがきサイズから発展させて、A4サイズの新聞にも挑戦していくということも可能です。アクティブに学習させることがカギ工夫次第で大きな成果が期待できる 具体的な授業展開例を一つご紹介しましょう。国立教育政策研究所では、全国学力・学習状況調査の結果を踏まえて、授業の改善・充実を図る参考となるよう、実際の問題を基に「全国学力・学習状況調査 授業アイディア例」を公表しています。その中に、資料を読んだ上で、質問に答えさせる問題がありました。今回、私はその質問の答えを、はがき新聞にまとめ、それを基に交流させる授業を、具体的に構想してみました。 まず、それぞれの生徒が思い思いにはがき新聞に解答の文章を書いてみて、次に、それを基季刊理想 2016 春号 ◆ 5