ブックタイトル季刊理想 Vol.119

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概要

季刊理想 Vol.119

TOPICS左から理想教育財団・酒井純司専務理事、川俣町立山木屋中学校・荒井孝祐校長先生、川俣町教育委員会・神田紀教育長、川俣町立川俣小学校・阿部雅好校長先生、理想教育財団・赤堀侃司理事震災直後の状況を説明する神田教育長16 ◆ 季刊理想 2016 春号 理想教育財団では東日本大震災が発生した2011年11月から、岩手県、宮城県、福島県の小学校・中学校に対する教育図書や教材の寄贈を行ってきました。本年度(2015年度)の寄贈先は川内村、双葉町、川俣町の3町村です。 昨年の10月13日には、理想教育財団から赤堀侃司理事(東京工業大学名誉教授)、酒井純司専務理事、五十嵐秀隆事務局長の出席の下、川俣町教育委員会に対する寄贈式が同町役場にて行われました。町を挙げて読書活動を推進 東日本大震災から1カ月以上が経過した2011年4月22日、放射線濃度が高い山木屋地区一帯が「計画的避難区域」(注)に指定された福島県川俣町。住民たちは、やむなく町内の別の地域に避難を迫られました。「震災直後、川俣町はむしろ沿岸地区から逃れてきた避難者を受け入れていた地域。しかし、事故当日の風向きも影響して、大量の放射線により山木屋地区が汚染されていたことが後になって分かりました。それ以来、何とか子どもたちを避難させなければとの思いでした」(神田紀教育長)。その言葉通り、川俣町は計画的避難区域の指定前に、町独自の取り組みとして、同地区の子どもたちを町の中心部の学校で受け入れる体制を早急に整えたほか、すべての学校の校舎、校庭、通学路の除染を徹底させました。 山木屋地区の幼稚園児・小中学校生徒は、現在に至るまで、ふるさとを離れ、それぞれ間借り教室で教育を受けていますが、神田教育長は「つらい状況であっても、子どもたちは常に前を向いている。そんな子どもたちに夢と希望を持たせることが大事」と指摘。そのための一施策として、町を挙げて進めているのが、読書活動の推進です。 川俣小学校・阿部雅好校長先生は「読書は学力向上に果たす役割も大きいし、電気が不通だった震災直後は特に読書に親しんだ子どもたちも多かったはず。今後も本町の読書活動をさらに充実させていこうとしているところ」と語るほか、山木屋中学校・荒井校長先生は「その意味でも理想教育財団の支援はありがたかったです。予算内で購入できなかった本を充実させることができ、感謝しています」と話します。精神面のサポートも充実させたい 今後の展望については、「震災からの復旧を通じて、子どもたちの『命』はもちろんのこと、『心』を守ることも重要と実感。子どもたちの心の痛みを分かってあげられる教師を増やしたい」と神田教育長。加えて、荒井校長先生は全校生徒が避難を余儀なくされている状況を踏まえて、「避難直後に比べて、今は生活が落ち着いた分、ご家庭の中でも将来に関するさまざまな意見が出て、子どもたちの気持ちも揺れ動いている時期。しっかりサポートしたい」と話しました。 一連の話を受けて、赤堀理事からは、震災直後に関係者と連携して取り組んだ被災地へのタブレット普及活動の経験を踏まえつつ、「未曽有の大災害の中、どの被災地でも、子どもたちのために教育の復旧に懸命に尽力された。川俣町の取り組みをお聞きして、改めて日本の教育の底力に思いを致しました」と語りました。※(注)2013年8月に山木屋地区は「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に再編川俣町で教育図書の寄贈式を開催