ブックタイトル季刊理想 Vol.119
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季刊理想 Vol.119
マス目効用の守破離VOICEどうしてマス目に従って書かなかったのかと問うてみると、異口同音に、最初は「マス目通りに書こうと思っていた」という答えが返ってくる。ところが、構想を練っている間に、「このマス目の量では足りない」という思いに駆られ、「最初からマス目を無視して書き出した」というのである。 では、マス目ではなく罫線の用紙であったならどうだったのであろうか? おそらく、「足りない」という思いは湧き上がってこないであろう。マス目があり、その型を超えるところに秘訣が隠されているのだと思われる。しいて言えば、「守破離」の「破」である。マス目を無視することで、自らの創作欲が解放されると言えばよいであろうか。これもマス目の効用である。〈俯瞰する〉 はがきの大きさは、一目で全体を眺めるに最適である。その俯瞰できる用紙にあるマス目であるから、あまり怖気づくことはない。 むしろ安心感を与える。とにかくこの用紙にまとめればいいのだという安心感である。全体を俯瞰することで、どこに何を配置するかというレイアウトの意識が芽生える。たんなる「はがき」ではなく、「はがき新聞」たるゆえんである。記事の配置、見出しの工夫等さらに絵や写真の活用にまで構想が及ぶ。何かを生み出すことは、元来喜びを伴うものである。無から有を生じさせることは、自己効力感を高めるものである。 自らの記事を客観的に見るためにも、はがき大の用紙を俯瞰することは欠かせないものである。少し離れて眺めるということから言えば、本来の意味とは異なるが、「守破離」の「離」に位置づけることができよう。第15 回 現在、実際に「はがき新聞」を推薦読書の手引きとして作成させている。大学の図書館内に「学生選書コーナー」を設け、そこに並べられている書籍へ誘うための重要なツールである。先輩から後輩へのお薦め必読書という体裁である。 今回原稿を書き進めながら、頭に浮かんできたことは、振り返りのツールとしての「はがき新聞」の活用である。私が担当する科目受講生には、毎回100字コメントを授業の最後の数分を用いて記入させている。主に感想であるが、学んだこと、届いたこと、響いたことがそこには反映される。 この100字コメントに代わって、次年度は「はがき新聞」による振り返りを課してみようかと思う。アクティブ・ラーニングが主流となる今、振り返りによる定着は必須である。 成果のほどはいずれまたの機会にということにしたい。関西国際大学教育学部教授中西 一彦先生「はがき新聞」には、はがきが果たす、心や思いを届けるという利点を内蔵し、加えて、マス目が設定されていることの効用も見逃すことはできない。その『守破離』を考えてみたい。はがき新聞の可能性―振り返りツール1955 年 兵庫県生まれ。大阪教育大学附属天王寺中学校国語科教諭として30年間勤務。その後、関西国際大学教育学部(教育福祉学科こども学専攻)に勤め、4 月に8 年目を迎える。現在、教授。14 ◆ 季刊理想 2016 春号