ブックタイトル季刊理想 Vol.129

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季刊理想 Vol.129

子どもと生き方⑯ 吉本 恒幸 聖徳大学大学院教授新しい学習指導要領を読み解く特別の教科 道徳編 その(3) 道徳科の内容(2)●よしもと つねゆき聖徳大学大学院教授。全国小学校道徳教育研究会会長、公立小学校長を歴任。日本道徳教育学会会員。文部科学省道徳教育指導資料作成委員。中央教育審議会委員などを務める。季刊理想 2018秋号 ◆ 1314  道徳科は人間としての生き方そのものを学習の内容としています。今回も前回に続いて、道徳科の四つの視点の一つである、「A主として自分自身に関すること」の内容項目について見ていきます。A主として自分自身に関すること節度、節制 〔第1学年及び第2学年〕 健康や安全に気を付け、物や金銭を大切にし、 身の回りを整え、わがままをしないで、規則 正しい生活をすること。〔第3学年及び第4学年〕 自分でできることは自分でやり、安全に気を 付け、よく考えて行動し、節度のある生活 をすること。〔第5学年及び第6学年〕 安全に気を付けることや、生活習慣の大切さ について理解し、自分の生活を見直し、節度 を守り節制に心掛けること。〔中学校〕 望ましい生活習慣を身に付け、心身の健康の 精進を図り、節度を守り節制に心掛け、安 全で調和のある生活をすること。 この内容項目は二つの要素によって構成されています。一つは、基本的な生活習慣に関することです。 基本的な生活習慣は、人間として最も基礎的で日常的な行動の在り方を指します。基本的な生活習慣は本来家庭で身に付けるべきことではありますが、今日の家庭生活を鑑みると学校でも指導に当たる必要があります。健康面では、身体や衣服の清潔、洗面・歯磨きなどが挙げられます。安全面では、交通事故や自然災害から身を守る能力の育成などが挙げられます。 二つは、進んで自分の生活を見直し、自分の置かれた状況について思慮深く考えながら自らを節制し、適切に生活をしていくことです。自己の確立にとって、自分を客観的に見つめ、自分の現状を内省することは不可欠なものです。このことは、自分や他の人の快適な生活を守ることにつながることも自覚させる必要があります。 新たな学習指導要領では、どの学年にも共通した重点として「自立心、自律性」を指摘しています。この内容項目はそれに直接関係するものとして重視すべきです。各学校での全体計画や年間指導計画にこのことが反映されなければなりません。個性の伸長(中学校:向上心、個性の伸長)〔第1学年及び第2学年〕 自分の特徴に気付くこと。〔第3学年及び第4学年〕 自分の特徴に気付き、長所を伸ばすこと。〔第5学年及び第6学年〕 自分の特徴を知って、短所を改め長所を伸ばす こと。〔中学校〕 自己を見つめ、自己の向上を図るとともに、個  性を伸ばして充実した生き方を追求すること。 個性とは、一人一人がもつ特徴や性格のことです。個性の伸長は、自分のよさを生かし更にそれを伸ばし、自分らしさを発揮しながら調和のとれた自己を形成していくことです。子ども達が自分らしい生活や生き方について考えを深めていく視点からも、将来にわたって自己実現を果たせるようにするためにも重視する必要があります。 ここでいう「特徴」とは、他者と比較して特に自分の目立つ点と捉えられています。長所だけでなく短所も含んでいます。自分の特徴を知るということは、その両面を見出すことといえます。特徴をよい方向へ伸ばせば長所となり、苦手なことを改善しなければ短所ともなります。 今、子ども達は自己肯定感が低いと言われています。人間関係の希薄化は子ども達の世界にも当てはまり、互いに深い関係性を築かずに同調圧力に流される場面も少なくありません。一人一人に固有のよさがあることを知り、それを大切にして生きていこうとする自覚を育てることが重要です。