ブックタイトル季刊理想 Vol.128

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概要

季刊理想 Vol.128

季刊理想 2018夏号 ◆ 1718 昨年度から進める授業改革を土台に活発な話し合い活動を全学年で推進 子どもたちが自ら学級づくりに参画する、新たな学級経営システム「学級力向上プロジェクト」(開発者:早稲田大学教職大学院教授田中博之先生)。いじめがない、安心できる学級づくりに向けて、実践する学校も増えています。今回は、昨年度から学校全体で同プロジェクトを導入した京都市立葵小学校の取り組みをご紹介します。アンケート結果を基にディスカッション「今回は『尊重』、『仲直り』の項目が低かったね」「どのように学級目標に反映させようか」 4月下旬、京都市立葵小学校6年1組にて、学活の時間を利用して行われた学級目標づくり。このときに用いられたのが、「学級力アンケート」の調査結果(学級力レーダーチャート)でした。子どもたちはチャートを見ながら、自分たちのクラスの状態や課題を分析。それを基に、班、そしてクラス全体でディスカッションしながら、学級目標をつくりあげていきます。 ディスカッションでは、「(数値が低かった)『尊重』と『仲直り』のどちらを優先するか」について、活発な議論が行われましたが、ある女子児童の「どちらもよりよい学級をつくるための大事な要素。両方を組み合わせた学級目標にしよう」との意見にみんなが賛同。最終的には、クラス全員が納得した上で「お互いを尊重し合い、素直に謝れる学級」という目標に決まりました。学級の状態を「メタ認知」できる 同校では、昨年度から、この学級目標づくりを含め、年間3回にわたり、学級力向上プロジェクトを全学年で推進。学級力アンケートを基にクラスの状態を把握し、具体的な目標・行動につなげています。市村淳子校長先生は、「学級力アンケートは、子どもたちが学級の状態を『メタ認知』するための欠かせないツール。クラスの課題は何なのか、改善には何が必要なのかを、教師だけでなく、子どもたち自身が考えられる点が最大の魅力です」とその意義を語ります。 また、同校の研究主任で、この日の授業も担当した樫原貴博先生も「これまでの学級目標はいくら耳当たりのいい言葉が並んでも、どこか根拠が希薄で、漠然としたものが少なくありませんでした。しかし、学級力アンケートを行うと、クラスの姿が数値となって出てくるので、目標もより具体的なものになっていきます。本校では生徒指導と連動させながら実施しています」と話します。普段の授業の充実が効果をもたらす 同校の取り組みの最大の特徴は、子どもたちが主体的に話し合いを進めている点にあります。特に、高学年になると、司会を担うのも、活動の時間配分を決めるのも子どもたち自身。単に意見を言い合うだけでなく、議論の内容を整理しながら、結論も自分たちで導きます。どうしてそのような活動が可能なのか、秘訣はあるのか。市村校長先生は、葵小学校が昨年度から進める授業改革が実を結んだ結果と言います。「当校では、どの学年でも授業を行う際に必ず『課題設定』を行います。授業の課題は何なのか、何を学ぶための時間なのかを、可視化して子どもたちと共有する。そして、いかにその課題を解決するかという観点から、さまざまなアプローチを駆使して、授業を進めます。最近では子どもたち自身が学習課題を設定したり、単元計画の中身を考えるようになってきました。このような目的意識を明確にした、本校の新たな授業スタイルと学級力の話し合い活動はとても親和性が高いと思います」市村 淳子校長先生京都市立葵小学校