ブックタイトル季刊理想 Vol.128

ページ
11/24

このページは 季刊理想 Vol.128 の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

季刊理想 Vol.128

10 ◆ 季刊理想 2018 夏号 ⑧  森山 卓郎  早稲田大学文学学術院教授■「スパッツ」「パンプス」「ジーンズ」で  クイズ!  クイズです。英語からきた外来語には、「ツ」「ス」「ズ」で終わるものがいくつかあります。「パンツ」「スパッツ」「タイツ」「ブーツ」「パンプス」「ソックス」「ジーンズ」「シューズ」などです。では、これらの言葉の共通点は何でしょうか。決して「ツ」「ス」「ズ」がつく言葉のすべてというわけではありません。例えば「クイズ」という言葉も「ズ」で終わる言葉ですが、これは違います。ここに挙げたような言葉だけです(はい、これがヒントになっているのですよ?)。よければ少し考えてみてください。■その答えとは?  では、答えを言いましょう。共通点は足に「はく」ものということです。なんとなく、「ツ」「ス」「ズ」には音の共通点もありそうです。どうしてなのでしょうか?  これは次のクイズになるかも・・・もうおわかりだと思います。これらの言葉は英語から来た外来語。英語では、二つある足にはくものは、いずれも複数で表します。つまりこれらは英語の複数形として日本語に入ってきた外来語なのです。これらは、英語では、pants、spats、tights、boots、pumps、socks、jeans、shoesなどと書きます。複数形といえばsなどが語の最後につく形で、「ス」がつくことになるのですが、発音はその言葉の終わりの音によって変化します。例えば、tで終わる名詞ならt+s で、スパッツのように「ツ」になります。有声音(濁音や「ん」や母音など)にsがつく場合は、「ジーンズ」のように「ズ」になります。なお、「レギンスleggings」も複数形ですが、英語での発音は「レギンズ」。日本では「レギンス」と「ス」になっています。  ですから、英語で、片一方だけを言う場合には、単数としての「スパット」「タイト」「ブート」「パンプ」「ソック」「ジーン」「シュー」「レギン」などと言わなければなりません。いちいち面倒ですね。特に、ジーンズなんか、腰の部分から見れば一つですから、そもそも片方だけを想像することはしにくいですよね(そういえば、服clothesやパジャマpajamasなんかも複数扱いですね)。■では、「スニーカー」は?  しかし、例外もあります。英語から来た外来語の中には、はくものなのに、「ス」「ツ」ズ」などの形ではないものもあるのです。そう、「スニーカー」「スリッパ」「サ●もりやま たくろう早稲田大学文学学術院教授。京都教育大学名誉教授。専門は日本語学。近著に『教師コミュニケーション力』( 明治図書 )、『日本語・国語の話題ネタ』(ひつじ書房)『日本語の〈書き〉方』(岩波ジュニア新書)など。ツスズでおわる外来語?ンダル」などです。なぜだかよくわかりませんが、これらの言葉は、単数形で日本語に入ってきています。はくものではありませんが、サングラスやイヤリングなども、英語で使うときはふつう複数形。なのに、日本語の外来語としては単数形の形です。ですから、英語で話す時、「対になったもの」として言う場合には、「スニーカーズ」のように複数形にする必要があります。  このように、英語は、単数か複数かということを大変気にする言葉。例えば、草履とか下駄を英語で言おうとする場合も、ふつうの使い方なら、zoris, getasとなります。英語では複数形にしなければ、片足だけのケンケン用、それも楽しい!?18