ブックタイトル季刊理想 Vol.126

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概要

季刊理想 Vol.126

●特別寄稿●特別の教科教材「山びこ村の二人」をもと吉本恒幸(よしもとつねゆき)先生●プロフィール聖徳大学大学院教授。全国小学校道徳教育研究会会長、公立小学校長を歴任。日本道徳教育学会会員。文部科学省道徳教育指導資料作成委員。中央教育審議会委員などを務める。授業実践の考察これまで小学校での道徳授業では、登場人物の行動を追い、もっとも重要な場面に焦点を当てた中心発問で価値の理解を図ることを行ってきた。教材によってはそれが効果的であることもある。しかし、児童の反応を見ると価値とは結びつかない意見も出てくることも多い。その場合、教師は「このことが大切だね」と授業のねらいに関わる部分だけを評価して進めていく。他の意見を出した児童は戸惑いを見せる。教師は、登場人物の心情をていねいに扱えば自然に価値理解が図られると思い込んできた傾向はなかったであろうか。こうした事態を避けるには、道徳的価値そのものを追究する3のような発問が必要である。道徳科の目標で「道徳的価値の理解を基に」と記されているように、全員が自分なりの考えをもつことが前提となる。自分で感じ、考えた道徳的価値は狭い内容かもしれないし、偏ったものであるかもしれない。そこで4の発問のように、他者と協働し「考え、議論する道徳」を展開する。「主体的、対話的で深い学び」を行うことでさらに道徳的価値の意義や大切さを理解していくことを目指すのである。道徳科の核心は、理解した道徳的価値を「自分とかかわらせる」ことにある。価値に照らして自分の状況を見つめ、課題を培うことにより生き直しを図る姿を一人一人が創り上げる。その結果、生き方に対しての思いも同時に形成されていく。その機能は3の「自己を振り返る」という学習活動で果たされる。おわりに「道徳科になったら何が変わるか」との問いをよく耳にする。不易という面では道徳科の目指すものは従前の道徳の時間と同じである。しかし、「考え、議論する道徳」に向けて授業の質を高める工夫が求められる。そのポイントは、道徳科の特質の機能を授業に位置付けることである。学習活動主な発問と予想される反応導入展開終末1「みんな」という言葉のイメージについて考える。・つながる・まとまり・仲間・大切2教材「山びこ村の二人」を聞き、話し合う。1権じいさんや村の人が平八を呼ばなかったのはどうしてでしょう。・平八が仕事をなまけているから。・誰かに何かをしてくれるわけではないから。2「それはいかん」と言って走った五郎はどんなことを考えていたでしょう。・村のみんなでお祝いをしたい。・一人でいる平八がかわいそうだ。・仲間外れはよくない。3このお話で「大事」だと思ったことを書きましょう。・仲間外れにしないことが大切だ。・人の気持ちを考えることが大事だ。・自分たちにとって「よいか、よくないか」何かを決めてはいけない。4友だちに自分の考えを伝え、話し合ってみましょう。3自分のことを振り返る。○誰とでも仲よく遊んだり一緒に過ごしたりしてきましたか。○気が合わないからと言って人を仲間外れにしたことはありませんか。○好き嫌いで人のことをうわさしたりしたことはありませんか。4教師の説話を聞く。〇展開の大要4◆季刊理想2017冬号