ブックタイトル季刊理想 Vol.125

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概要

季刊理想 Vol.125

2 ◆ 季刊理想 2017秋号 ポーカーや七並べなどのゲームで使うトランプは、英語では「カード(プレイング カード)」と呼びます。それでは、「トランプ」の英語の意味は何かと調べてみると、「カードゲームなどの切り札」とあり、さらに、「最後に出すためにとってある最も有力な物、人、手段など」とあります。 アメリカ合衆国のトランプ大統領が「最も有力な人」であることを願うとともに、「最後にとってある最も有力な物や手段」を使わないことを祈る毎日です。 「トランプ現象」と言われる状況が北アメリカやヨーロッパを中心に、全世界に広がりつつあります。イギリスのEU離脱やトランプ氏の米大統領選出など、すでに形となって表れてきているのかもしれません。それらの国々に共通して言えることは、第一に政治家や大企業、マスコミなどの既成勢力への不信感です。もちろんマスコミには放送や新聞も含まれます。第二に報われない若者の不満の蓄積、第三に孤立主義・内向き思考の蔓延、第四に移民政策への反発、第五にポピュリズムの浸透などです。この現象を一言で言えば、「真実より感情が優先する時代の到来」です。 「是々非々」の是か非かの判断基準は、「正しいか正しくないか」のはずですが、「快か不快か」になりつつあるのです。「正確な情報なんていらない。自分にとって都合の良い情報であれば、それで十分。」となれば、偽(フェイク)ニュースがツイッターやフェイスブックなどのSNSで拡散するばかりです。問題なのは、悪意に満ちた偽ニュースが急速に増殖していること。1年半程前の熊本地震の際、「動物園からライオンが放たれた」という情報がSNSによって一気に拡散し、現地の8割以上の人々がこの情報を信じ、不安にさいなまれました。人間はパニックな時ほど極端な情報を信じる傾向があると言われています。これを聞いて、関東大震災の時に起こった悲劇を思い起こす人もいることでしょう。このままでは、災害や事件・事故が起こったとき、偽ニュースが火に油を注ぐことにもなりかねません。今、世界中でその対応に躍起になっていますが、ファクト・チェックが追い付かないのが現状です。偽ニュースの被害や悲劇を少しでも少なくするには、自ら情報の真偽を判断する力や態度を身に付ける必要があるのです。 そのための方法の一つが新聞を読むことだと考えます。時には誤報もありますが、インターネット情報に比べ、裏付けをとった新聞記事は極めて信頼性の高いものと言えます。日常から正確な情報に接していれば、自ずと判断基準が備わってくるはずです。手に入れた情報がその基準からずれていれば、それを疑い、その真偽を様々なメディアで確かめることも可能になるからです。 新聞を読んでいれば、全ての問題が解決するなどとは思っていませんが、新聞を読む人が少数派になりつつある今だからこそ、正確な情報の価値と必要性を改めて確認しなければならないと思うのです。 コミュニケ―ションのツールとしてSNSを否定するつもりはありませんが、運を天に任せるような「トランプ占い」を、切り札にしている場合ではないのです。切り札は何か一般社団法人 日本新聞協会NIEコーディネーター 関口 修司●関口修司(せきぐちしゅうじ)昭和30(1955)年生まれ。昭和54年3月東京学芸大学を卒業後、東京都公立小学校教員として勤務。その間、平成3年~19年まで、群馬大学教育学部非常勤講師。平成16年度より北区内3校で校長を務める。平成26年度東京都教育委員会職員表彰(学校経営・NIE)。平成28年3月北区立滝野川小学校を定年退職。同年4月より日本新聞協会NIEコーディネーターに就任。「学校組織としてのNIE」「NIEタイムの提唱」「NIEのカリキュラム化」「行政と連携を図るNIE」「NIE効果の見える化」などの課題に取り組む。