ブックタイトル季刊理想 Vol.125

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概要

季刊理想 Vol.125

広島市立五日市南中学校 文部科学省調査によると、平成27年度に新規採用され、初任者研修を受けた公立小学校教員のうち、学級担任を受け持った先生の割合は96・3%。採用1年目のほとんどの教員が、学級担任を務めていることが分かります。経験が浅く、ノウハウが不足する教員であっても、いかに学級をまとめ、担任としての業務を適切に行うことができるか。今号ではその課題解決につながる有効な対策として、学級力向上プロジェクトの実践例をご紹介します。叱るよりも有効な学級再建の切り札 大阪府豊中市立原田小学校(井上茂校長先生)で1年生の担任を受け持つ今福知沙先生は、今年採用2年目の小学校教師です。今では自信を持って学級経営に取り組んでいますが、新規採用された昨年度は、大きな困難に直面しました。学級開き直後の段階で、クラスの守るべきルールや規律を確立できなかったために、受け持ちの3年生のクラスは、常に私語が多く、落ち着きのない状態になってしまいました。 今福先生は子どもたちの長所を見つけて、ほめることは得意でしたが、その一方で、子どもを叱ること、厳しく接することが苦手でした。次第に「今福先生は怒らない」という実態が子どもたちの間に伝わり、学級の規律をさらに緩める結果となりました。 今福先生は学級を立て直すために、「ベテランの先生方を参考に、子どもたちへの叱り方を身につけよう」との考えに傾きましたが、当時、教頭を務めていた蛯谷みさ先生(現・豊中市立上野小学校校長)は、まったく別のアプローチを提案しました。それが学級力向上プロジェクトでした。 学級力向上プロジェクトとは、①学級力アンケートによる自己評価、②学級力レーダーチャートを基にして話し合う「スマイルタイム」、③学級力向上のために子どもたちが主体的に取り組む「スマイル・アクション」という3つの活動から成り立つ問題解決学習です。蛯谷先生は「1年間のR - PDCAサイクルに沿って一連の活動を繰り返すことが、経験の浅い今福先生の指針となり、支えとなる」と考えた上での提案だったといいます。子どもの意見を尊重し、自主性に任せる 蛯谷先生の提案を受けて、今福先生は早速学級力向上プロジェクトに取り組みました。5月の連休明けのことです。 まず、「よいクラスってどんなクラス?」をテーマに子どもたちが意見を出し合い、その内容を教室に掲示した後、学級力アンケートを実施。レーダーチャートの結果をもとに、特活の時間を活用して、学級のルール作りをテーマにしたスマイルタイムに臨みました。 あらかじめ、蛯谷先生から「子どもたちの意見を尊重すること」という助言をもらっていた今福先生。その言葉通りに、子どもたちの意見に率直に耳を傾けるスタンスに徹したところ、子どもたちから次々とアイデアが出てきました。自分たちで学級のルールづくりを始めたのです。「特に有効だったのが、レーダーチャート。客観的な数値をもとにするから、子どもたちから本音が出てくる。何とか数値をあげたい、いいクラスをつくりたいという子どもたちの意欲を刺激したのだと思います」(今福先生)。 これを機に、クラスの状態は徐々に変わり始めます。今福先生が指摘せずとも、自分たちで決めたルールを守ろうと、友だち同士で注意し合うようになりました。さらに子どもたちの側から「今度はこれについて話し合いたい」と今福先生に提案してくるまでになりました。「夏休み前にはクラスが確実に良い方向に進み出しているという実感がありました」(今福先生)。はがき新聞の実践を効果的に連動させる「初任者」も無理なくできる課題解決アプローチ。子どもの力を引き出しながら、学級の立て直しに成功した今福 知沙先生豊中市立原田小学校季刊理想 2017 秋号 ◆ 17