ブックタイトル季刊理想 Vol.125

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概要

季刊理想 Vol.125

●かみや のぶゆき1983年弁護士登録。社団法人著作権情報センター主催「市民のための著作権セミナー」の講師担当。『知って活かそう!著作権』『編曲家の権利』など著書多数。学校と法律<第37回>弁護士 神谷 信行●かみや のぶゆき1983年弁護士登録。社団法人著作権情報センター主催「市民のための著作権セミナー」の講師担当。『知って活かそう!著作権』『編曲家の権利』など著書多数。音楽教室の実技指導と演奏権音楽教室での模範演奏や受講者の演奏で演奏使用料は払うべきか、を考えます。著作権35条ガイドラインによれば ここで参考にすべきは、ジャスラックも関わっている著作物の複製に関する「著作権35条ガイドライン」です(これはWebにアップされています)。 このガイドラインによれば、「学校その他の教育機関」の内容として、「社会教育においては、上記教育機関(神谷註:文科省が認める学校及びこれに準じる学校)と同等の年間教育計画を有するところ」については、公立・私立の学校と同様とすることが示されています。これは教育現場での利用の利便を優先させたものと言えるでしょう。 このように、年間カリキュラムを持った専門学校で複製することは、公立・私立の学校における、授業の課程における複製と同視して、許諾はいらないとされています。 今回訴訟提起した音楽教育を守る会の教室は、この「年間のカリキュラム」に相当する授業計画をもっているところが多いのではないでしょうか。もしそうであるとすれば、「著作権法35条ガイドライン」の適用上、複製許諾が不要とされることになります。 このことを利用者の側から見れば、著作権の根幹をなす複製権の運用において教育における利便を優先していることは、演奏権の取り扱いにおいても同様に考慮されなくてはならないのではないかという疑問が生じると思われます。 今回の訴訟において、このような論点に関し、裁判所がどのような判断を下すのか注目されるところです。一審判決が出るまで相当の時日を要すると思われますが、最終判断を待ちたいと思います。教育と著作権の観点から 本年2月、市井の音楽教室において指導者が模範演奏したり、受講者が演奏することについて、ジャスラック(一般社団法人日本音楽著作権協会)は来年から演奏使用料を徴収するとの基本方針を明らかにしました。これに対して本年6月20日、音楽教室を運営する団体「音楽教育を守る会」が合同し、著作権使用料を請求する権利がないことの確認を求める訴訟を提起しました。 この訴訟は、直接には公立・私立学校における音楽教育には関係しませんが、「教育と著作権」という観点から重要な問題を含んでいるため、今回この問題について考えてみたいと思います。カラオケと音楽教室は同視できるか 訴訟を起した音楽教育を守る会のホームページでは、提訴理由を次のように説明しています。「音楽教室におけるレッスンにおいて先生が生徒に教える目的で楽器を弾いて示すのは、音楽を音楽として享受させるのではなく、教授目的であり、これが『公衆に直接…聞かせることを目的』とした『演奏』とは到底いえません。」 これに対して、新聞等で報じられたジャスラックの見解は次の通りです。「カラオケにおける客の歌唱について演奏使用料の請求を認めた判例があり、それを前提とすれば、カラオケと同様に、音楽教室の生徒の演奏も自分や先生に聞かせるもので演奏権が働き、演奏使用料の支払が必要となります。」 ここで対立しているのは、カラオケと音楽教室を同視できるかという点です。より根本的に言えば、「音楽教室における教育のための演奏指導」は「公衆に演奏を聞かせること」と同視できるかという点です。12 ◆ 季刊理想 2017 秋号