ブックタイトル季刊理想 Vol.125

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概要

季刊理想 Vol.125

よい授業とよい学級経営 これまで約三〇〇回近くの研究授業の講師を務めてきた。校長時代、自校の授業観察を入れると約一〇〇〇回ほどの授業をつぶさに見てきたことになる。授業を見てつくづく思うのは、「よい授業の陰によい学級経営あり、よい学級経営あるところによい授業あり」ということである。自分の教師時代のことをふりかえってみても、学級がうまくいっている時には子どもの反応もよく、こちらの意図した授業が展開できて、楽しく、子どもにとって学力がつく授業ができていたと思う。しかし学級内で、子どもたちのトラブルが発生して、子どもたちの人間関係がうまくいっていない時などは、授業もよい形にはならなかった。授業と学級経営は表裏一体の教育作用なのだと感じたものだった。 学級経営がよい状態になるかどうかは、学校でともに過ごす集団である学級の中の人間関係、つまり子ども同士、教師と子どもたちの間の人間関係が望ましい状態になっていることが大事である。 今、学級力という言葉が注目されている。学級が望ましい状態になるような指導のすべてを教師側から見た場合に学級経営ととらえるならば、子ども同士が学級内の問題を把握し、自分たちでよりよい学級を築いていこうとする力が学級力と言うことになる。この学級力の向上は、日常の授業、とりわけ国語科の授業を通して鍛えて伸ばすことが最も大きな力になると私は考えている。学級力が向上するということ 学級力の基本にあるものは、「この学級をよくしたい」「この学級を居心地がいいものにしたい」という子どもの切なる願いである。これを自分たちが力を合わせて成し遂げようという強い望みである。そしてそのエネルギー源となるのは、子ども同士がお互いをよく知り、お互いのよさを認め合うことである。そして認め合った子ども同士が力を合わせて一つのことに向かって進んでいこうとする気持ちを持った時に、学級力が向上的に変容をするものである。 では学級生活の中でお互いのことをよく知り、認め合うのは、どのような活動がある時なのか。それは言葉による表現活動がされた時である。日常のあいさつ、会話、相談ごとなどは「話すこと・聞くこと」が中心となっている。自分の考え、意見、感想なども「話すこと・聞くこと」で行われる。自分の考えを友達に伝えるために残すものとしては、何かに「書くこと」が大事である。話すことは音声言語として消えていくものであるが、形として残るものは何度も反芻できる。そしてそれを「読むこと」によって、友達の考えを知ることができる。理解することができる。自分の考えと比べることができる。このような言葉による表現活動は、人と人を結ぶコミュニケーションとして、子ども同士お互いのことを認め合う空気を醸成する。早稲田大学教職大学院客員教授 開智国際大学教育学部准教授 遠藤 真司先生通して考える学級力の向上国語科の「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の三領域で培われた力を伸ばすことが、子どもたちの学力とともにコミュニケーション力を高め、ひいては学級力の向上につながっていく。季刊理想 2017 秋号 ◆ 9