ブックタイトル季刊理想 Vol.118

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概要

季刊理想 Vol.118

子どもと生き方⑨吉本 恒幸 聖徳大学大学院教授新しい学習指導要領を読み解く総則編 その(2)●よしもと つねゆき聖徳大学大学院教授。全国小学校道徳教育研究会会長、公立小学校長を歴任。日本道徳教育学会会員。文部科学省道徳教育指導資料作成委員。中央教育審議会委員などを務める。18 ◆ 季刊理想 2015 冬号 学校で子供たちに生き方を考えるための教育活動は多様に行われています。皆さんがご存知の算数や国語などの教科や道徳の授業、特別活動はその代表でしょう。そうした教育活動はそれぞれ特質がありますが、全体を見ればどれも人格形成を目的としています。その意味で道徳教育が行われているともいえるのです。前回に道徳教育の目標をお示ししましたが、その内容について考察していきます。道徳教育の目標の内容 自己の生き方(中学校: 人間としての生き方)を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養う。①自己の生き方を考える 小学校は人格形成の基盤を形成する時期です。中学校はその発展として位置付けられます。子供たちが自らを見つめ「自己の生き方」「人間としての生き方」を考えるようにすることが重要です。 「生き方」を考えるとは、子供一人一人が、よりよい人間になろうとする自己を肯定的に受け止めるとともに、他者との関わりや集団との関わりの中で、自分の特徴を知り、伸ばしたい自分の姿について深く考えることです。それはまた、社会の中でどのように生きていくのか、国家や社会の形成者としてどうあればよいのかを考えることにつながります。②主体的な判断の下に行動する 自立的な生き方や社会の形成者としての在り方について、子供自らが考えたことを基盤にして人間としてよりよく生きるための行為を自分の意志や判断により選択して実践することを指します。すなわち、日常生活で起こる問題や自分に降りかかる課題に正面から向き合い、考えの対立があっても自分の力で考え、よりよいと判断したことについて具体的に行動を起こすことです。③自立した人間として他者と共によりよく生きる 「自立した人間」として生きる自己は、同時に「他者と共に」よりよい社会の実現を目指そうとする社会的な存在としての自己を志向するものです。人は誰もがよりよい生き方、よりよい自分の確立を図ろうとしますが、そのためには他の人々と協力し心を通じ合わせて生きることが不可欠です。自己の確立と他者との適切な関係づくりは同一のこととして捉えられます。④そのための基盤となる道徳性を養う 上記のような思考や判断、行動などを通して生きる営みを支える基盤となるものが道徳性です。すべての教育活動を通して行う道徳教育はこの道徳性を養うことを目標としています。道徳性は、人間としてよりよい生き方を目指して行われる道徳的行為を可能にする人格的特性であり、人格の基盤をなすものです。人間らしいよさであり、道徳的価値が内面において統合されたものです。学校教育では、特に道徳的判断力、道徳的心情、道徳的実践意欲と態度を道徳性として位置付けています。道徳性の様相①道徳的判断力 それぞれの場面で善悪を判断する能力です。人間として生きる上で道徳的価値が大切なことを理解し、様々な状況の下でどのように対処することが望まれるかを判断する力です。的確な道徳的判断力をもつことで、機に応じた道徳的行為が可能となります。②道徳的心情 道徳的価値のよさを感じ取り、善を行うことを喜び悪を憎む感情です。人間としてのよりよい生き方を志向する感情でもあります。道徳的行為への動機として強く作用します。③道徳的実践意欲と態度 道徳的判断力や道徳的心情によって価値あるとされた行動をとろうとする傾向性のことです。道徳的実践意欲は、道徳的価値を実現しようとする意思の働きであり、道徳的態度は、具体的な道徳的行為を取ろうとする身構えです。 道徳性は心の中の様相で「内面的資質」と位置付けられています。これらは、徐々にしかも着実に養われることによって潜在的・持続的な作用を行為や人格に及ぼすものなのです。