はがき新聞で始める学級力向上

(9) 小学校の実践事例4:今までの学びを生かす(2017年9月公開)

対象:小学校5年生(大阪府堺市立浜寺小学校 教諭 森嵜 章代 さん)

注)報告者の所属学校名は、レポート作成当時のもので、現在と違っている場合があります。

学級経営の改善に

サイズが手ごろで、手軽に仕上げられるはがき新聞は、子どもにとって負担が少なく、伝えたい内容をタイムリーに発信できます。クラスで起きているホットな話題を取り上げてみんなを活気づけたり、取材活動を通してお互いのがんばりを認めたりすれば、子どもどうしの関係改善にもつながります。このような学級経営への有効性に着目し、はがき新聞を「学級力向上プロジェクト」に組み込みました。

指導の流れ

子どもたちはすでに国語科や他の学習の機会に新聞を書いているので、問題なく書けるとも思いましたが、今までの学びを生かし、伝えたいことをより効果的に伝えるために、以下のような流れで指導しました。

  • 学級力向上のための提案を実行し、その成果や課題をレーダーチャートから分析する。
  • モデルを示し、はがき新聞の書き方を知る。
  • 実際にはがき新聞を書く。
  • 教室に掲示し、互いのがんばりを認め合い、学級への思いを知り合う。

モデルの提示はより具体的に

モデルには次のような内容を盛り込みました。

  • グラフや数値を入れて、言いたいことが伝わるように工夫する。
  • 主張に具体例をつけて意見を述べる。
  • 取り組みや変容を伝える。

全体的な変化を伝えるのか、部分的な変化を伝えるのか、あるいは内容に合わせて棒グラフを使うのか、折れ線グラフを使うのか、表を使うのかなどを選ぶようにしました。また、問いかけで読み手を引きつけることや具体例を挙げてわかりやすく伝えること、見出しやレイアウトの工夫について指導しました。
 さらに、学級力向上のための取り組みによって、どんな変容があったかを伝え、背後にある取り組みや自分の感じ方、考え方を書くようにも指導しました。ただし、習熟度の低い子どもも意欲的に取り組めるように、レーダーチャートの結果を表したカードも利用できるように準備しました。

はがき新聞サンプル

算数の学びを生かしたはがき新聞

はがき新聞サンプル
A グラフを用いたタイプ
 グラフを用いて、変化の大きかった「校外」「認め合い」の項目についての結果を伝えたものです。1.1倍、1.2倍という数値が強調され、「認め合い」のポイント上昇の要因がMVPの発表にあることを自分なりに分析しています。しかも良い点ばかりでなく、「尊重」に課題があり、傷つける言葉が存在する現状をしっかり認識しています。それを漫画で表現し、友だちに読んでもらおうと、楽しんで書いています。

はがき新聞サンプル
B レーダーチャートを利用したタイプ
 レーダーチャートをそのまま利用して書いていますが、問いかけを入れたり、見出し(グーサインの力)を工夫しています。グーサインは子どもたちで決めた「静かにしよう」の合図。誰かがグーサインを出すと、それを見た友だちがサインを連鎖させて静かにしようとする試みで、子どもたちの知恵が結集されています。その効果を感じ、「これからもできるときはサインをします」と、決意も述べています。イラストや段組みなどデザインの工夫も見られます。

友だちのがんばりを認める

はがき新聞サンプル
A つながり発言力の向上に取り組む
 子どもたちには、つながり発言力をもっと上げたいという思いがありました。誰かが発表した後、同じ思いを感じた人がうなずいたり、「そう思います」と反応したりすることで安心感を生み出そうと考えたのです。その目標への取り組みを推進するためにはがき新聞を活用しました。 具体的に友だちの名前を入れ、目標達成のために努力している人を応援しました。

はがき新聞サンプル
B 自主勉強のがんばりを評価
 自主勉強の取り組みにもはがき新聞を活用。自主勉強をがんばる子どもは学習でもよく発言できる傾向にあります。自主勉強を強く促すために「先生がこんなシールをくれるよ!」とアピールしています。  ここに取り上げる以外の題材でも、友だちのがんばりを認めるはがき新聞の作成は可能です。こうした取り組みにより、クラスみんなの学級力向上プロジェクトへの思いは高まりました。

学級力向上に果たしたはがき新聞の役割

クラスの誰もが1枚のはがき新聞を1時間程度で仕上げられました。短時間で自分の気持ちや思いを表現する力が育っただけでなく、友だちどうしの交流にも役立ち、それが学級力向上にも有効でした。

最後に子どもたち自身の感想を紹介します。

●はがき新聞の良さ
「はがき新聞を書くと、たとえば2月から3月までどういう変化があったかわかる。学級力の新聞もすらすら書けるのでいいと思う」
「人を説得する文をつくる力もつくし、みんなの作品を見ることで、自ら発表したり、人の意見も聞いたりすることができるのでいいと思う」
●学級力向上プロジェクトへの思い
「私たちのクラスは協力するという目標を立てても、あまり成功しませんでした。アンケートやスマイルタイムで協力する意識を高めたり、レーダーチャートで低かったものを目標にあげたりできるようになりました。だから、アンケートやスマイルタイムを通して話し合いをすれば、きっといいクラスになると思います。クラスで協力できるにようになったのが何よりうれしかったです。そして、私自身も協力できて良かったと思います」

(10) 小学校の実践事例5:さまざまな人とつながるためにに続く

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